●労働法制の特徴-憲法との関係
次に、日本の労働法制、特に労働基準法にみられる特徴について話を進めたいと思います。
第一に、憲法との関係です。憲法に労働法の基本原則が体系的に盛り込まれ、その基本原則に基づいて労働組合法や労働基準法など、労働法制の基軸となる法律が展開されているの は、日本の大きな特徴です。せんほど第1回で述べたように、憲法28条は労働三権、そして憲法27条は労働権の保障と最低労働条件の法定を定めることを謳っています。
●環境変化に伴って労働基準法は多様化傾向に
特徴の二つ目として、労働基準法の取り巻く環境の変化への対応について、5点お話しします。
一点目は、日本の労働基準法は労働基準に関する立法が進むとともに、多様化の傾向をみせたということです。例えば、1959年に最低賃金法が独立、1972年には労働安全衛生法が独立しました。 また、業務上の災害と疾病について、労災補償という形で使用者に無過失の責任を課している労働者災害補償保険法も独立しています。
ここで、セーフティネットとして極めて重要な一つである最低賃金について言及しておきます。
最低賃金とはいうまでもなく、企業が従業員に支払わなければならない最低限の時給・時間当たり賃金です。日本の最低賃金は現在全国平均で848円、最も高い東京都で958円です。この水準は主要国に比べてかなり見劣りしています。例えば、フランスは1260円、ドイツは1130円、アメリカは州ごとに違いますがニューヨーク州は1144 円です。よって、速やかに、まず全国平均で1000円にすることが求められています。
●その他のさまざまな環境変化対応策
二点目に雇用政策です。本来は失業対策としての雇用政策法制が労働市場の変化に応じて、多彩な雇用政策の展開となりました。1974年雇用政策の枠組みが構想され、失業保険法(1974年に雇用保険法に吸収)が財政的基盤を提供することになったのです。
三点目として、(第二次から第三次への)産業構造の変化や女性の就労拡大など、働く者の多様化に伴い、新たな法制度が整備されたことが挙げられます。例えば、男女雇用機会均等法、労働者派遣法、パートタイム労働法、高年齢者雇用安定法、育児休業法、次世代育成支援対策推進法などです。これからは、ワーク・ライフ・バランスやセクハラ・パワハラ・マタハラといった各ハラスメント...