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小さなビジネスへのプラットフォームビジネス活用の可能性

プラットフォームビジネス(3)小さなビジネスのチャンス

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
情報・テキスト
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏が、プラットフォームビジネスの活用の可能性について解説する。プラットフォームビジネスというと、つい大企業のビジネスモデルと思いがちだが、柳川氏はポイントさえ押さえれば、ローカルな事業や小さなビジネスにもプラットフォームビジネス的展開の可能性は十分にあると言う。(全3話中第3話)
≪全文≫

●ローカルなビジネスにも有効なビジネスモデル

 
 次にプラットフォームビジネスの活用の可能性について考えてみたいと思います。プラットフォームビジネスというと、どうしてもグーグルやアップル、アマゾンといった企業を思い浮かべるために、世界的な企業のビジネスモデルのように考えられがちです。しかも、そこで非常に大きな、あるいはさまざまなサービスを展開するという巨大企業のビジネスモデルのようにも思われがちです。

 しかし、実はプラットフォームビジネスは、必ずしもこういう大きな企業、または世界的な企業だけが採用できるものではなく、実はもっとローカルな、あるいは小さなビジネスモデルにもとても有効なものだと思います。そこで、そのようなローカルな、もしくは小さなビジネスへのプラットフォームビジネス的な発想、ビジネスモデルの活用の可能性について、少し考えてみましょう。


●地域の小売店にみるサービスのあり方

 
 プラットフォームビジネスの要点は、一つの市場だけではなく複数の市場を連携させ、その市場を結び付けて、一つ一つでは獲得できなかったような利益の機会、消費者への利便性を提供することにあります。そう考えていくと、実は巨大な企業でなくても、身近なところでも二つの市場、あるいは相互に関係した複数の市場を結び付けていくことにメリットがあるようなビジネス、サービスを、いろいろ思い付くことが分かります。

 例えば、単純に物を売っているサービスであっても、その物を売るだけではなく、さまざまなアフターサービスなど付帯サービスによって利益を挙げているという事業は多々あると思います。または、一般の小売店を見ても、小売店がそのお店に来た人に単に製品を売るだけではなく、その人のさまざまな生活活動を把握・理解することによって、その人にとって利便性の高い商品を紹介してあげる。場合によっては、自分のお店にはないようなサービスを紹介してあげるということも、例えば地域の小売店などではよく行われていることだと思います。

 これもよくよく考えてみると、広い意味でのプラットフォームビジネスといえなくもありません。自分がメインで提供している財やサービスだけでははく、それに付随した消費者、利用者にとって利便性の高いサービスを提供しているからです。通常、それは文字通りのサービスということで、ただで提供したり、あるいは極めて安い利用料でアフターサービスを提供したり、という形でやっているわけです。


●無料サービスは、全体を拡大させる手段


 こういうことを意識して拡大させていくと、プラットフォームビジネスの原型が出来上がります。なぜならそれは、無料でさまざまなサービスを提供して、消費者、利用者の利便性を高め、そのサービスを利用する人たちが増えれば製品がより売れていく、という意味ではグーグルが提供している無料のサービスと、実は構造がよく似てくるからです。

 重要なことはこういうビジネスモデルを意識して行うということで、通常だとあまり意識せずにやってきたアフターサービスや利用者へのサービスの提供を、全体を拡大させる手段と考えて、無料であってもむしろ積極的にそういうサービスを提供し、利用者を増やしていく。その結果としてさまざまな財やサービスを小売店で提供していくということができれば、立派なプラットフォームビジネスに広がっていくのです。


●脇役のサービスを主役にすえる逆転の発想


 さらにいえば、こうしたことをもう少し意識を変えていくことで、今まであまり意識せずにやってきたアフターサービスやさまざまな利便性の提供について、どういう利便性を提供すれば来客が増えるだろうか、あるいは商品を購入してくれる人が増えるだろうかというように、もっと考えていくことができるようになるはずです。

 そのように、ある意味で主役と脇役を入れ替える、例えば今までは端っこの脇役にすぎなかったようなアフターサービスを主役に据えて、そこから利便性を高めてお客さんを増やしていく、あるいは売り上げを増やしていくという工夫をすることが、立派なプラットフォームビジネスだといえます。

 グーグルも、今までは脇役と考えられていたような「検索」を、むしろ主役に据えて積極的にやることで、利用者を増やし、その結果、広告収入を大きく増やしてきました。そのような逆転の発想が、ある意味でプラットフォームビジネスの成功の秘訣だったのだと思います。

 そう考えると、かなりローカルな小売店においても逆転の発想でサービスを主役に据えて、そこから利用者を増やして顧客や売り上げを増やしていく。こうした発想も十分可能でしょう。


●情報、データの活用で主役と脇役の連携性を高める


 もう一つの重要なポイントは、その主役と脇役の連携を...
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