●コンピュータサーバー上の膨大な情報量を物語る電力利用量
最近、クラウドコンピューティングや、あるいはビッグデータという言葉が、日本の書店や雑誌にも盛んに出てきていて、世の中もこういう情報化に、やはりだんだん敏感になってきたと言われています。実際に今、ICT、情報通信技術、あるいは情報処理技術の展開には、すさまじいものがあると言われています。
少し前に聞いて非常に印象的だった数字を一つご紹介したいと思います。今、いわゆるコンピュータのサーバーが大量に使われていて、情報処理が行われていますが、世界中のサーバーで利用されている電力の量を全部足し合わせると、日本国内で使われている電力総使用量よりも大きいと言われているのです。日本の国内では、企業でも家庭でも交通機関でも、いろいろな形で電力が使われていますが、その日本の国内で使われている全ての電力量よりも、世界中のサーバーだけで使われている電力利用量の方が大きいということは、いかにそのサーバーがたくさんの電力を利用しているか、ということを物語っているのです。
もちろん、このサーバーの電力利用量を、できるだけ減らそうというような技術革新が行われてはいますが、それにしても、それだけ使われている電力に匹敵する膨大な情報が今、コンピュータサーバー上に乗っかっているということだと思うのです。
●扱う情報量の圧倒的増加を可能にしたクラウドコンピューティング
よく知られているように、世界中に散らばっているサーバーを同時に並列処理することによって、非常に安価なコストで大量に情報処理ができる仕組みが、クラウドコンピューティングという仕組みです。事務所や家の中にいても、あるいは歩きながらでも、常にそういうクラウドコンピューティングの仕組みにアクセスすることによって、大量の情報処理が行われていると言われています。
かつてはインターネットというと、インターネット上でのいろいろな映像や、さまざまな人間が今までインプットした情報が中心だったのですが、最近は「インターネット・オブ・シングス」という言葉で言われているように、全てのものにセンサーが付いているものですから、そのセンサーの情報がネット上に広がっていくことによって、これまで以上に扱う情報量が増えていくということだと思います。
●クラウドコンピューティングで、早くて安価な情報処理が可能に!
現実のビジネスの世界を見ると、こうした情報化がクラウドコンピューティングで非常に安く行われたということで、やはりいろいろなことが大きな影響を受けています。
先日、政府のある会議で紹介された事例では、例えば、VISAというクレジットカードの会社が、世界で数百億件の取引を処理するらしいのですが、かつてはこの数百億件の情報処理をするために、20日も30日も時間がかかっていたのが、今では本当に数時間で処理できるようになり、処理時間が4000分の1ぐらいに縮小されたと言われています。これなどは、そのクラウドコンピューティングの影響を物語っています。
あるいは、楽天市場では、いろいろな顧客情報やその他もろもろの情報が流通していますが、この処理時間もこの数年で4分の1から5分の1に縮小しているということです。また、『ニューヨーク・タイムズ』が100年分の新聞をPDF化した時に、このクラウドコンピューティングシステムを使ったら、本当に数時間で処理が終わってしまって、金額にしてわずか1000数百ドルで済んでしまった、とも言われているのです。
●アメリカに比べ、ビッグデータへの取り組みが非常に遅い日本企業
ことほどさように情報システムが高度化して使われていくことによって、ビジネスが変化するわけですが、残念ながら、どうも日本の経営者は、例えばアメリカの経営者に比べて、このビッグデータに対する感度が非常に遅いと言われているのです。
これも、その政府の研究会の中で紹介されたアンケート調査なのですが、日本政策投資銀行が、アメリカ100数十社と日本200数十社の大手企業に行ったアンケート調査があります。「ビッグデータということを聞いたことがあるか」、あるいは「ビッグデータについて何か今、取り組みをしているのか」というような質問を投げかけたところ、アメリカでは、「ビッグデータに対応していない」、もしくは、「ビッグデータについてあまり今、大きな動きはない」と答えた企業はわずか6.数パーセントでした。これに対して日本の場合は、70パーセントぐらいの企業が、「ビッグデータに対して関心がない」、あるいは「今の段階では大きな取り組みをしていない」という答えが返ってきたのです。片や6パーセント、片や70パーセントですから、やはりこれだけ大きな違いがあるという...