情報技術の破壊力
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トヨタやホンダはソニーのウォークマンになってしまうのか
情報技術の破壊力
伊藤元重(東京大学名誉教授)
「トヨタ、ホンダは、ウォークマンになってしまうのか」。産業界の声に、東京大学大学院経済学研究科教授・伊藤元重氏が答えて語る、情報技術の破壊力とビジネスの今後。日本企業が生き延びるために持つべき視点とは。
時間:10分30秒
収録日:2015年8月5日
追加日:2015年8月24日
≪全文≫

●日本車は情報革命を生き残れるか?


 最近、ビッグデータや、人工知能(アーティフィシャルインテリジェンス=AI)、クラウドコンピューティングなど、いろいろな議論が出てきており、情報ネットワークや通信技術が社会をどう変えるかが、非常に大きな話題になっています。

 よく産業界の人が言うことですが、「トヨタやホンダがソニーのウォークマンのようになってしまうのではないだろうか」という危惧を提示する人がたくさんいます。彼らがどういう意味で言っているかというと、こういうことです。ソニーのウォークマンは、30~40年前に登場した大変素晴らしい画期的な商品で、音楽シーンを大きく変えました。

 その後もソニーはいろいろな技術革新や設備投資をし、どんどん改良に改良を重ねて、ウォークマン自身は素晴らしいものになっていったわけですが、人々がインターネットでつながるということと、音楽をデジタル信号に変えることによっていろいろなビジネスが可能になるという、この2点において、やはり大きな遅れをとりました。結果的には、結局、アップルのiPod、iPhoneのような流れに負けてしまったというか、時代遅れになってしまいました。

 要するに、全てのものがネットワークにつながることによって、これまでのビジネスとはかなり違ったステージになってくる可能性があるわけです。

 自動車がそうなるかどうかは、よく分かりません。しかし、現に自動車でもいろいろなものがネットワークにつながるようになってきています。例えば、地図でいえば、ご案内のようにGoogleマップがどんどん進化していて、渋滞情報から何から、いろいろなことに関して、もう自動車メーカーの純性ナビよりも機能面ではるかに優れている面があります。また、自動運転がどこまで広がるか分かりませんが、Googleをはじめとして多くのIT企業は、車の自動運転走行の実験を始めています。

 こういう形で、交通体系そのものがネットワークにつながっていくことによって、その中の一つの部品である自動車などがどうなるかについては、やはり議論していく必要があるのではないでしょうか。


●カテゴリーキラーのキラーが登場した


 こういう議論は、ITの世界では昔からあります。例えば、スマートフォンです。電話機がいつの間にかどんどんスマートフォンに変わっていく中で、5年...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ