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産業革命以来の新しい産業革命が到来、必要なのは意識革命

カーボンニュートラル革命と日本の未来(3)クルマの概念と環境意識を変える

猪瀬直樹
作家
情報・テキスト
電気自動車の優れた点は、CO2排出量の削減にとどまらない。実際にテスラのEVに乗ってみると、クルマの概念を変えるさまざまな違いに気づかされる。避けられないEV化の流れの中で日本の課題は、自動車産業が抱える雇用の問題と、遅れた環境意識にどう取り組むかという点にある。(全3話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫

●実際にテスラを買ってみて分かったこと


―― この本(『カーボンニュートラル革命』)の中で非常に印象深かったのが、大きな視点からルールやゲームの世界が変わったことを書くのと同時に、先生ご自身がテスラをお求めになり、体験して、いかに今までの車と違うのかを縷々、書かれていることです。

猪瀬 大事なことは、当事者にならないとダメだということです。トヨタのハイブリッドとテスラのEVがどう違うのかが運転してみると分かります。「あ、ここまで来ているのか」ということを感じます。電気自動車は電気でモーターが動くことによって駆動し、ガソリン車はエンジンという内燃機関でガソリンが燃えて動きますが、違いはそれだけではありません。

 まずクルマに対する考え方が違います。先ほど携帯電話の話が出ました。われわれは携帯電話をしゃべるためのものだと思っていましたが、今はスマートフォンで、LINEやフェイスブックのメッセンジャーなどを使っていろいろな連絡をします。そしてそれだけではなく、いろいろなものを検索することもできます。つまり、ガラケーとスマホは別のものなのです。これと同じように、今までの車と私が買ったテスラは全く別のものであるということが、運転すると分かります。そして面白いことに、今はガソリンスタンドにいかなくて済んでいるのです。

―― それはそうですよね。

猪瀬 当たり前のことですが、例えば1か月に1回ガソリンスタンドで50リットルくらいのハイオクで満タンにすると、1万円近くかかることもあります。今は石油の値段が上がっていて、高いのです。

 そして、これまでの車はジャラジャラと鍵を持っていましたが、テスラはスマホでピッピッとやって車を開けます。電気を建物のメーターから取って、カチャっと刺してはめるだけなので、ガソリンスタンドが自分の家にあるようなものです。夜間電力を使うと安く、1000円ほどで満タンになり、1500円もかかりません。1万円と1000円~1500円では、燃料費に差が出ます。これも自分で経験してみて、「あ、ここが違うのか」ということが分かりました。ガソリンスタンドに毎月1回行かなければならなくて面倒くさかったのですが、もうその必要はありません。もちろん途中で充電する必要はありますが、充電スポットが高速道路のサービスエリアにありますし、テスラ専用のスーパーチャージャーもあちこちにあります。それも画面に表示されます。

 さらに、自動運転のレベルが違ってきます。今、ガラケーとスマホの違いを言いましたが、例えば車を運転していて、カーナビを見ます。新しく道路ができても、普通カーナビにその情報は入っていません。ところが、テスラはその都度アップデートするので、ナビに新しい情報が入ってきます。極端なことをいうと、工事用の三角コーンもナビに映ります。つまり、常に更新されているということです。建物が変わったら風景が変わってしまうのではなく、その都度いつも認識します。なぜかというと、今までの車はカーナビも自動運転の情報も、車一台がアローンで認識するだけだったからです。ところがテスラの場合は、8台の車載カメラとレーダーがあり、それで全体を把握します。約50万台売れており、その経験がサーバーにフィードバックされて、常に更新されている状態なので、自動運転のレベルが違います。

―― まさにビッグデータとして使っているということですね。

猪瀬 そういうことです。だから、何百億キロのデータがたまっていて、それが一台一台に還元されます。それはスマホと一緒で、要するにガラケーとスマホの違いぐらい、今までのガソリン車と電気自動車の違いがそういう形で「思想」として表れているということです。そこです。

 漫然とガソリンから電気に変わったのではなく、ガラケーとスマホの違いと同じように、違うものになったと考えなければいけません。もちろん電気は(車のバッテリーに)蓄積されているので、何かあったら取り出すこともできますからね。


●産業革命以来の新しい産業革命にトヨタはどう対応していくか


猪瀬 そういうことで今、新しい革命が起きているのです。(執筆した書籍を)『カーボンニュートラル革命』というタイトルにしましたが、EVだけでも革命が起きています。カーボンニュートラルという考え方を含めて、世界で革命が起きているのです。これは産業革命以来の、本当に新しい産業革命です。

 トヨタが下請け工場を守らなければいけないという使命感は大事です。しかし、産業革命で「機械を壊せ」という「ラッダイト運動」がありましたが、それと同じになってしまうことなので、産業革命を否定することはできません。そこまで来てしまっているので、前に進むしかないのです。

 トヨタはそれだけのたくさんの人を抱えています。工場や小さな企業、...
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