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日本のEV普及が遅れているのはメーカーだけの問題ではない

カーボンニュートラル革命と日本の未来(2)取り残される日本の自動車産業

猪瀬直樹
作家
情報・テキスト
巨大な自動車産業を抱える日本において、EVの普及が遅れている。なぜトヨタはEVに踏み切るのが遅れてしまったのか。そこには、トヨタだけではなく、われわれ消費者側の環境意識にも原因がある。企業においても、環境へ配慮した取り組みは経営戦略の中核的要素になっており、国全体として環境意識を高めていくことが求められている。(全3話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫

●20年先の予測では世界のベスト30に日本企業がいなくなる


猪瀬 EVで一番有名なテスラは、どんどん投資して、カリフォルニアだけにあった工場をネバダにもつくりました。そして、電池工場と車の組み立て工場を一緒にしたギガファクトリーを上海につくりました。さらに今度はベルリンにもつくり、世界に拠点を置いています。今の年産は50万台ですが、テスラの株式時価総額はトヨタが30兆円なのに対して、テスラは60兆円です。

 国別ではドイツと中国がトップ争いをしていますが、単独のメーカーだけでいうと、テスラがトップです。日産のリーフは最初にEVの量産車を出しましたが、低迷していて、グラフでは下降線をたどっています。トヨタはハイブリッドで満足していて完全に出遅れました。

 アメリカのパイパー・サンドラーという投資会社が、2040年のEV自動車のシェアをシミュレーションで出しました。それによると、2040年にフォルクスワーゲンは、全体のシェアで11パーセントを取っています。台数では約1000万台なので、今とあまり変わりません。これはEVだけの数です。なぜなら、そのときには世の中の車の95パーセントはEVになっているからです。2030年~2035年には、新車はEVしか売ってはいけない時代に入っています。2040年時点では、フォルクスワーゲンは今と同じように約1000万台です。テスラは今たった50万台ですが、それが800万台以上になり、フォルクスワーゲンにほとんど接近している状況になります。

 その中でパイパー・サンドラー社のシミュレーションにおける予想は、トヨタに対して厳しいものがあります。トヨタは今の生産台数の40パーセントぐらいになってしまい、400万台になるといわれています。つまり、今はフォルクスワーゲンとトヨタが1000万台で競っている世界ですが、フォルクスワーゲンは1000万台を維持する一方、トヨタは400万台に減ります。そして、テスラは1000万台に近くなっています。こういう状況です。

 この予想が本当に当たらなければいいんですが、しかしもしそうなったときに、日本の企業の中でいつも世界のベスト30に入っているのはトヨタの一社だけなので、それが無くなってしまいます。これはとんでもないことです。

―― そうですね。それがわずか20年先の予測として出されているということですね。


●トヨタがEV製造に踏み切れなかった理由


猪瀬 日本で最も優等生なのがトヨタです。その優等生が脱落する可能性があるのです。これにはメーカーとしてのトヨタに問題があります。一つは、トヨタは部品メーカーなどいろいろな下請けの膨大な裾野を抱えています。そういうトヨタがもし電気自動車になった場合、部品が3分の1に減ってしまうので裾野が小さくなります。つまり、雇用が失われます。そういう責任を感じているので、EVに踏み切るのがどうしても遅れてしまうということが現実としてあります。出だしで遅れてしまっているのです。

 そんなことをやっているとどういうことになるかをここで話していますが、その要因の一つには今、話したようなメーカーの責任があります。そしてもう一つは、ハイブリットで良いと思っている消費者にも責任があります。

 EUでは2030年~2035年になると、ハイブリッドを含めて内燃機関(エンジン)の車は売ってはいけないことになります。つまり、環境意識が全然違うのです。メーカーだけではなくて、一般の消費者の環境意識も違います。(日本とは)環境意識が全く違っていて、EVをつくるメーカーと、そのEVを進んで買う消費者という世界ができあがっているのです。

 ところが日本ではEVは遅れていて、「EVなど今必要なの?」という消費者がいます。こういう状況の中で、今回、『カーボンニュートラル革命』というタイトルで本を出しました。なぜならこれは革命だからです。つまり、ゲームのルールが変わっているのです。

 「2050年カーボンニュートラル」は世界のスローガンです。それに参加していかないと、取り残されてしまいます。だから日本は何とかやりくりして、「2050年カーボンニュートラル」を打ち出したいのです。日本だけ打ち出さなかったら、先進国から仲間外れにされてしまいます。ヨーロッパはそういう方向がはっきりしています。今度、COP26が2021年11月に開かれますが、そこで日本がいかにCO2を減らしていくのか、足並みをそろえて宣言していかなければいけません。


●産業構造の変化と日本の認識不足問題


猪瀬 そうした中、産業構造が大きく変わっています。今は投資もそこに集中してきています。世界中からいろいろなお金が集まっているということですが、お金持ちだけがお金を投資しているわけではありません。日本でも、年金などのわれわれ庶...
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