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マックの成功は商品戦略等よりも、実は財務的手法?

ベネッセ~「プロ経営者」による改革は成功するか?

大上二三雄
MICG代表取締役/立命館大学経営管理研究科 客員教授
情報・テキスト
個性的な形で進む日本企業のグローバル化について、企業コンサルタントとして豊富な経験を持つエム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役・大上二三雄氏が解説するシリーズ。今回は、グローバル化とは異なるが、企業改革の側面から、進研ゼミで有名な優良企業・株式会社ベネッセホールディングスを取り上げる。再建請負人・原田会長兼社長は優良企業の改革にいかにして斬り込んでいくのか?(シリーズ第1話目)
時間:05:03
収録日:2015/01/30
追加日:2015/04/30
≪全文≫

●プロ経営者の原田氏を入れて企業改革を進める


 今回は、グローバル化とは少し違うかもしれませんが、企業改革という意味で非常に面白い、株式会社ベネッセホールディングスの事例を取り上げてみたいと思います。

 ベネッセというのは、もともとは福武書店です。進研ゼミ、しまじろうで一躍地位を確立した非常に優良なもうかる企業です。現在は介護施設(有料老人ホーム運営棟数)などでも日本で第1位になっているような企業です。

 この会社には、福武總一郎さんというオーナーがいます。自ら経営をやっておられた時期もありましたが、現在は後継者に委ねています。ただ、面白いのは、会社の調子がイマイチだったり、雰囲気が緩んでいるなと思ったときには、外部から人材を登用するのです。以前ですと、ソニーの執行役員専務をやられていた森本昌義さんを入れて、成長のためにコーポレート経営を導入しました。森本さんの後はプロパーの方々がずっと経営をやられてきたのですが、今回、日本マクドナルドホールディングスの社長を務め、会長をやられている(編集部注:2015年3月25日付任期満了に伴い退任)原田泳幸さんというプロの経営者を迎え、企業改革を進めようとしたのです。

 ところが、その矢先にあの情報漏えい事件が起こりました。ただ、原田さんはすごい人で、転んでもただでは起きないというか、その情報漏えいの責任を取らせる形で、従来の経営をやっていた方々や影響力を持っていた方々を一掃し、自らのより強いリーダーシップを確立したという状況です。


●日本マクドナルドの増益をもたらした財務的手法が影響し問題噴出か?


 原田さんという方は、マクドナルドでは商品戦略やマーケティングなどで成功したというイメージがあるのですが、実は、日本マクドナルドの利益を上げていったのは、財務的手法です。どういうことをやったかというと、一つは、自ら持っている直営店を、フランチャイズビジネスを行う人たちであるフランチャイジーに売却していったことです。

 また、マクドナルドには、もともと小規模なオーナーがたくさんいたのですが、彼らの生産性があまりよくないところに目を付けて、「原則、5店舗以上は持ってくれ。持てない人はもうマクドナルドをやめてくれ」という、かなり厳しいことをやり、事業の承継を促しました。それで、例えば「もう私はやめました」というオーナーがいれば、それをいったん本部が買って、大きくまとめて、やりたいフランチャイジーに売っていきました。実は、そのような財務的手法で、ずっと利益を上げてきていたのです。

 今のマクドナルドでいろいろな問題が噴出しています。そのことについて、新しく来た女性のCEOが問題だと見られている節もありますけれど、私は、やはり根幹部分で、そういった直営店をフランチャイズに移していき、外部に責任を持たせ、自らの責任を減少させていったことが影響しているのは、否めないのではないかと思います。


●欧米流経営注入で会社がどうなるか、経営のあり方を占う意味で要注目


 一方、ベネッセは、これまで非常にもうかってきましたので、そういう意味で、日本的な含みがたくさんある会社です。間接部門のコストなどは相当に高い上に、機能も重複しているところがあります。ですから、原田CEOは、まずはそういうところに目を付けるでしょう。先日、リストラを発表していましたが、それは多分序の口で、これからどんどん厳しいKPI(重要業績評価指標)を課した欧米流の経営をベネッセの中に入れていくと思います。

 そのときに、果たして今までのベネッセとは全く違う文化にいきなり直面して、ベネッセの今の方々がどの程度耐えられるのか。日本人は我慢強いですから、結構耐えて頑張っていくとは思いますが、そこでまた文化が変わって、どういった会社になっていくのか。私は、ベネッセの将来はやや懐疑的に見ていますが、これについても、われわれのこれからの経営のあり方を占う意味で、注目をしていきたい会社だと思っています。
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