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役員の半数以上が外国人! グローバル製薬企業・武田薬品

武田薬品~外国人トップの改革に会社は耐えられるか?

大上二三雄
MICG代表取締役/立命館大学経営管理研究科 客員教授
情報・テキスト
個性的な形で進む日本企業のグローバル化について、企業コンサルタントとして豊富な経験を持つエム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役・大上二三雄氏が解説するシリーズ。今回は、大型買収でグローバルな製薬会社に成長を遂げた武田薬品工業株式会社。外国人トップは果たして老舗企業を改革できるのか?(シリーズ第3話目)
時間:07:06
収録日:2015/01/30
追加日:2015/05/11
≪全文≫

●しがらみのない長谷川氏が改革を継承、グローバルな買収を実現


 それでは、今回は、武田薬品工業についてお話をしてみたいと思います。

 武田薬品は、ご存じのように、長谷川閑史現会長が社長に就任して、ミレニアムやナイコメッドといった大きな買収を行い、グローバルな製薬企業にまで成長したという経緯があります。

 もともと長谷川会長の前の武田國男さんという武田家の方が、しがらみなく相当な改革を行い、次にバトンを渡す時に、派閥といったようなことから最も離れている一匹狼で、「こいつならしがらみなく改革をやり続けてくれる」ということで選んだのが、長谷川会長であると聞きます。結果として、本当にしがらみなく、グローバルな買収を行って拡大するという路線を突き進んだということです。


●グローバル化完成のために非エリートのフランス人を後継者に


 そして、2014年6月に、フランス人のクリストフ・ウェバーというGSKのワクチンの事業部のCEOをやっていた人をスカウトし、自らの後継者として任命しました。現在、長谷川会長がCEO、ウェバー社長がCOOですが、おそらく今後、ウェバー社長がCEOになるだろうと皆が思っています。

 なお、マネジメントチームは、ほぼ完全にグローバルなメンバーになっています。また、ウェバー氏はもともと南フランスの出身です。フランスにはグランゼコールというエリートがいるのですが、それとは少し違うリヨン大学の薬学博士というバックグラウンドの持ち主です。長谷川会長はおそらく、そのようなバックグラウンドでもステップアップしてくる優れた人間を自分の後継者に据えるというところで、自ら行った二つの大きな買収やグローバル化を完成させてくれる人材として、外国人を選んだのだと思います。


●主要薬品特許切れによる業績低迷でリストラ~ミレニアム部隊は消滅へ


 もともとミレニアムを買収した時に、ミレニアムのチームが武田薬品に来ました。そしてその後は、そのミレニアムのチームがナイコメッドを買ったのです。当初、独自性を担保することを約束してミレニアムを買収したのですが、武田の新薬パイプラインがうまくできていなかったり、もうかる薬品がどんどん特許切れになっていく中で、結果的にリストラをせざるを得なくなり、ミレニアムを含めたリストラをグローバルに行い、研究開発部門を統合したのです。これにより、ミレニアムの経営陣は、一人辞め、二人辞め、そして、ミレニアムの部隊はいなくなったという状況です。


●高コストの日本のHQの徹底リストラに関係者が耐えられるか


 では、このような状況下、武田薬品は果たして今後どのような会社になっていくのか。日産では以前、ウェバー氏と同じフランス人のカルロス・ゴーンという社長が自分のチームを引き連れて来て、日産を改革しました。ただ、ゴーン氏が据えた役員は、本当に枢要な部分の数人だったのです。やはり日産は日本の会社ですから、ゴーン氏は日本人の自治権をかなり尊重した改革を行いました。しかし、今回のウェバー氏は、そのようなことは全く気にしていません。会社を完全にグローバルにつくり替えることが彼の使命だと考えてやっています。

そうすると、コストが高いのは明らかに日本です。日本のヘッドクオーターコストは、グローバルの企業と比較すると異常に高く、それだけ無駄な人員をたくさん本社に抱えているのが日本企業だということになります。新薬が出てどんどんもうかっていけばまだいいのですが、残念ながら、武田薬品のパイプラインは、今のところそんなにいい新薬があるようには見えません。そうしますと、ウェバー氏ができることは、リストラを進めて、まずはコストを削減していくことだと思います。

 同じ能力で、どちらのコストが安いかといえば、日本人よりもやはりグローバルな人間の方が安いのです。また、どれだけ無駄な人間がいるかというと、やはり日本にたくさんいるのです。ですから、ここのリストラは、おそらく彼は徹底的にやってくると思います。そうなったときに、果たして、武田、あるいは、その関係のステークホルダーといった今の日本人の関係者が耐えられるかどうか、そこが大きなチャレンジだと思います。

 では、これから改革が進んでいくと、武田の日本人たちはどうなのかというと、おそらく結構な比率の日本人社員は耐えられないのではないかと思います。しかし、それでもきっと会社は残ります。そして、ウェバー氏もステップアップして、次のキャリアを求めて行き、また新しい社長がきっと海外から来るでしょう。

 さらに、次に考えることは、本社が果たして日本にあることが合理的なのかということです。いずれは本社を日本から移そうというような話になるかもしれません。そのときに、果たして、武田家、あ...
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