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持続可能な財政と永遠にハングリーあり続ける国家の設計を

国への二つの提言~企業の海外移転と民から見た国家論~

小林喜光
東京電力ホールディングス株式会社 取締役会長
情報・テキスト
海外移転する企業が多く、国内の輸出は増えないという現実を踏まえ、日本に還元するシステムを構築する必要性を説く三菱ケミカルホールディングス社長・小林喜光氏。難問山積みの日本に対する小林氏の二つの提言とは果たして?
時間:09:22
収録日:2014/09/01
追加日:2015/04/06
≪全文≫

●民から見た国家論~ディシジョンメイキングしながら戦える国家に~


小林 先ほど言ったように、日本は「言葉を吐く」ということがあまりうまくない。一方では村八分になりたくない。されど皆、自分の小さい水田でお米を作り、そこで何か大きいことをやろうとは、あまり言わせたくない。結構、矛盾するものを両方持っている中で、しかし、結果としてはヒステリックに一つの方向に行ってしまうのです。ですから、これは阻止しなければいけない。しかし、やはりディシジョンメイキングはしっかりやりながら、戦えるような国家でないといけない。これは、僕の国家に対しての要求です。

 思い出しましたが、民間は国に対して全く何も負い目はないのです。一番儲かるところに本社をもっていく。正直、僕はそういうテンデンシー(傾向)を持っていると思っていますから。

 今は経団連も、「国が少し変なことをしたら政治も経済も苦しい」「政経一体でないと国家として勝てない」という見方でやっています。これは一つの考え方かもしれないけれど、個々の企業はとっくに海外へ行ってしまっているから、輸出が増えないではないですか。ですから、面従腹背なのです。政治に対して今、従っているような人はたくさんいるけれど、本当に中を見てみたら、全部自分のディシジョンで海外に行っている人がたくさんいるのです。これをしっかりと見ながら日本に戻すことをしていかないと、国家が大変なことになるということです。今度は民から見た国家論というか、「何のための国なのか」「何のための愛国心なのか」ということです。


●タックスポリシーがグローバル化する中、日本は違った発想での展開をすべき


小林 歴史にすごく詳しい人と歴史がほとんど分からない人、その両方がいるかもしれないけれど、でも、この国に生まれて、四季の豊かなおいしいごはんと味噌汁のある国というものを持っているではないですか。ここのところの折り合いをつけなければいけません。民間企業といえども、外国人が社長になったり、「税の安いところがいいに決まっている」と、オランダやシンガポールに本社を移すことを、アメリカ人も皆、今やり出しています。そういうタックスポリシーが、明らかにグローバルで出てきています。この辺りも、政治はまだそれほど考えていません。もちろん「日本にも持ち込みたい」と言うけれど、「持ち込むのはもっと先だ」と僕は思うのです。今は誰も来てくれないのですから。直接投資が3パーセントぐらいでしょう。

―― 「六重苦」ですものね。

小林 ですから、まず出て行かないようにする。つまり、海外移転を止めるのが先で、それをまずやらないと、いくら何でも民間がただ金を貯め込むというだけではなかなか解決しません。そこも難しいところですね。

―― でも、おっしゃったことが本質問題ですよね。実際に黒田(東彦)さんが出てきて、異次元緩和をやろうと、輸出量は当たり前のように伸びるはずがない。競争力が備わったエレキのような業界もあるけれど、そもそもが「もう工場を移したあとだよ」という状況で、研究開発の施設までも移してしまっているから、今と同じ状況で国内に投資する人などいません。ましてや外国人が。

小林 来るかねと。

―― はい。ほとんど終わったところで、「なぜ税率の高いところに行かなければいけないの?」という感じになっています。多分ここが本質問題ですよね。

小林 そうですね。もっと違った発想で展開しないといけません。そんな悠長なイコールフッティング的理論では、「時すでに遅し」という危険性がありますよね。

―― まさにそれをずっとやってこられた小林社長だし、私は全く同感なのです。輸出総量が伸びないことは、少なくともメーカーのサプライチェーン図を引けば結構分かっていただろうし。

小林 メイドインマーケットで皆行っているのですから、こちらからつくったといっても持っていくはずはないですよね。


●長期的にエキサイトしていく日本へ~二つの提言~


―― 小林社長が言われるように、次の社会で、どうしたらもう一度人間が幸せに生きられるのか、どうしたらもう一度心に火をつけて、ある程度の戦う体制になれるのかということですね。やはり違うゲームで満足してもらうということで、それは「GDPが増えた、減った」という話だけではないでしょう、というところですよね。

小林 ですから、そこのファクターが完全に抜けてしまっている部分があるのです。オリンピック、パラリンピック的なイベントは確かに用意しました。これはそれなりの効果を生みましたが、その先はもうないですからね。もう少し長期的な、本当にセンチュリーのオーダーでエキサイトしていく日本、やはりこれが次だと思います。

―― そこの絵図面を引けないと、やはり再活性化はしな...
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