グローバリゼーションの意味と対処法
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
グローバル化の歴史はいつから?国際化との違いは?
グローバリゼーションの意味と対処法
政治と経済
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
なぜ今、あらためてグローバリゼーションなのか。それは、われわれが考える間もなく生活を覆い、日常に定着してしまった現象だからだ。政治学者で慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏が、グローバリゼーションの意味と対処法を考察する。
時間:9分10秒
収録日:2016年1月25日
追加日:2016年3月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●大航海時代や明治維新はグローバル化現象?


 グローバリゼーション、グローバル化の意味についてお話しします。以前から私は、「グローバリゼーションと少子高齢化がなければ、日本が政策を考えるときの選択肢の幅はかなり広がる」と言ってきました。この「グローバル化」とは一体何なのでしょうか。

 かつては「国際化」と言っていました。それぞれの国があり、その間を「国際」と呼んでいました。しかし、グローバリゼーションの場合は地球全球を指すわけです。いつからこういうことになったのでしょう。

 人によっては「大航海時代が、すでにグローバリゼーションの初めだ」という人もいます。確かに当時はグローバルであり、十字軍が国を越えて攻め入るのも、ある種のグローバルなことでした。しかし、これは中世から近代への移行期の話であり、現在のグローバリゼーションとは意味が違うと思います。

 また、ジョセフ・ナイは、グローバリゼーションが起こった時に自国のアイデンティティを維持しようとしたのは日本だとして、明治維新をその代表例に挙げています。しかし、あの時は鎖国を開いたにすぎません。確かに、海外からの圧力を受ける中、国内のアイデンティティをいかに維持するかというのは、明治維新が抱えていた問題だろうとは思います。しかし、これは「藩をやめて国家をつくる」というネーション・ステート(国民国家)作成のプロセスで出てきた話であるわけです。

 そのように考えていくと、現在のグローバル化とは、国を越えて貿易や投資が行われたり、金融が瞬時にして世界中を動き回ることになります。


●グローバル化を再定義すると本質が見えてくる


 では、グローバル化の具体的な例は何なのか。これについても、いろいろな意見があります。

 オフショアやアウトソーシングによって海外に工場を出すことが、経済現象としてはあるのではないかと言われます。政治の世界では、国民国家という単位を超えた活動が行われています。国際条約や国際機関もあれば、国連にNPOを送り込むということなども、昔はなかった問題です。

 社会的なことでいうと、国という単位からの移動が二つの要素で縛られていました。一つは旅行で、これは非常に自由になりました。アメリカにもヨーロッパにも、飛行機に乗れば12時間ほどで行ける時代になっています。もう一つは移住・移民のことで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
老年が惨めと思われる4つの理由とは…キケロの論駁に学べ
本村凌二
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(2)ヒトの子育てと脳の関係
チンパンジーは乱婚、ヒトは夫婦…人間の特殊性と複雑性
長谷川眞理子
『江戸名所図会』で歩く東京~上水と十二社(1)「水の都」江戸の上水道
玉川上水の歴史…約8カ月で完成?玉川兄弟の功績とは
堀口茉純
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部