シチズンシップ教育の課題
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
シチズンシップ教育・主権者教育とは何か…重要点と問題点
シチズンシップ教育の課題
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
若者の投票率が低いことを懸念してシチズンシップ教育、主権者教育が行われてきた。投票率の背景には選挙に関連するテクニカルな問題があるのだが、そもそもシチズンシップ教育とは投票率の問題だけではなく、公のことを考える「シチズン」、国民を育てることをもっと考えなければならない。シチズンシップ教育の現状と課題について論じる。
時間:11分14秒
収録日:2019年7月3日
追加日:2019年8月3日
≪全文≫

●シチズンシップ教育の背景と課題


 シチズンシップ教育の課題というお話をします。シチズンシップ教育がなぜ出てきたのかといえば、投票年齢を18歳に引き下げるということがあったからです。それから、今まで有権者の啓発とか、あるいは有権者をどうやって選挙に行かせるかなど、どちらかというと上から目線の議論が多かったのですが、そのような中、シチズンシップ教育、あるいは主権者教育ということが注目されたということです。

 一般的な背景としては何なのかといえば、若者の投票率が非常に低いということです。ですから、18歳に投票年齢を引き下げたとしても、低いままでずっと推移するとなると、投票率は全体的にゆがんだまま続くのではないかという危機感があったのです。


●大学生になると投票率が下がる理由


 実際、2016年の参議院選挙から18歳の投票が始まったわけですが、この時驚くべきことに18歳の投票率は高かったのです。18歳ということは、高校生がかなり入っています。この高い数字がそのまま推移するかどうかということで、翌年の2017年、衆議院選挙が行われました。その衆議院選挙の時、2016年の時の18歳は19歳になっているわけですが、投票率を見るとがくっと落ちています。一方、18歳の投票率はそこそこ維持されています。これは高校における主権者教育、あるいはシチズンシップ教育はある程度功を奏したのではないかと思います。

 私も学生たちにいろいろ聞いてみたのですが、1つ分かったのは(1人暮らしをしている場合に)住民票を動かしていないということです。そうだとすると、元の自宅に行って投票するかというと、例えば地方から来ている学生は、投票権がどこにかすらよく分からないのでそのまま過ごしてしまいます。かなり意識の高い学生の中には、不在者投票の手続きはかなり複雑なのですが、これを行って投票しました、という人もいました。そういう意味でいうと、大学生になってから投票率が下がるということは、不在者投票というある意味テクニカルな問題が1つあります。


●なかなか解決できない投票率問題


 ただし、一般論として日本の投...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保