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なぜシチズンシップ教育が注目されているのか

シチズンシップ教育の課題

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/10MTVオピニオン副座長
情報・テキスト
若者の投票率が低いことを懸念してシチズンシップ教育、主権者教育が行われてきた。投票率の背景には選挙に関連するテクニカルな問題があるのだが、そもそもシチズンシップ教育とは投票率の問題だけではなく、公のことを考える「シチズン」、国民を育てることをもっと考えなければならない。シチズンシップ教育の現状と課題について論じる。
時間:11:14
収録日:2019/07/03
追加日:2019/08/03
≪全文≫

●シチズンシップ教育の背景と課題


 シチズンシップ教育の課題というお話をします。シチズンシップ教育がなぜ出てきたのかといえば、投票年齢を18歳に引き下げるということがあったからです。それから、今まで有権者の啓発とか、あるいは有権者をどうやって選挙に行かせるかなど、どちらかというと上から目線の議論が多かったのですが、そのような中、シチズンシップ教育、あるいは主権者教育ということが注目されたということです。

 一般的な背景としては何なのかといえば、若者の投票率が非常に低いということです。ですから、18歳に投票年齢を引き下げたとしても、低いままでずっと推移するとなると、投票率は全体的にゆがんだまま続くのではないかという危機感があったのです。


●大学生になると投票率が下がる理由


 実際、2016年の参議院選挙から18歳の投票が始まったわけですが、この時驚くべきことに18歳の投票率は高かったのです。18歳ということは、高校生がかなり入っています。この高い数字がそのまま推移するかどうかということで、翌年の2017年、衆議院選挙が行われました。その衆議院選挙の時、2016年の時の18歳は19歳になっているわけですが、投票率を見るとがくっと落ちています。一方、18歳の投票率はそこそこ維持されています。これは高校における主権者教育、あるいはシチズンシップ教育はある程度功を奏したのではないかと思います。

 私も学生たちにいろいろ聞いてみたのですが、1つ分かったのは(1人暮らしをしている場合に)住民票を動かしていないということです。そうだとすると、元の自宅に行って投票するかというと、例えば地方から来ている学生は、投票権がどこにかすらよく分からないのでそのまま過ごしてしまいます。かなり意識の高い学生の中には、不在者投票の手続きはかなり複雑なのですが、これを行って投票しました、という人もいました。そういう意味でいうと、大学生になってから投票率が下がるということは、不在者投票というある意味テクニカルな問題が1つあります。


●なかなか解決できない投票率問題


 ただし、一般論として日本の投票率問題でいえば、自分たちは数が少ない、つまりマイノリティであるということがいえます。それで投票率が少ない。そうなれば当然政治の中での発言権、票の数が少なくなるわけですから、マイノリティはさらに輪をかけたことになります。声を上げるという力にならないわけです。

 それから、特に年金のような世代間の問題、あるいは財政問題もそうですが、環境問題のように次の世代に先送りされていまいそうなことに対して、世代間問題の自覚がない。そうはいっても、若者は冷めている。例えば、被選挙権の方の年齢を引き下げようという話をしても、あまり若者は乗ってこない。そういう意味では、割と冷めているということです。

 投票率を上げることについて、いろいろな議論があります。経済学者などは世代別選挙区制度にしたらどうか、ということを主張したりするのですが、その説通りに設計をしようとすると「選挙区が作れない」ということが、途中で分かったことがあります。あるいはドメイン投票については、両親が子ども、特に母親が子どもに代わって投票権を持つという制度も経済学者は主張するのですが、これは現実に動いているところはまだありません。


●高校生に対するシチズンシップ教育の重要点と問題点


 高校生に対する主権者教育は、そういう意味で効果があったのか、なかったのかということでいえば、ある程度は効果があったといえます。あるいは、最初の年などはマスコミが猛烈に報道しました。主権者教育、シチズンシップ教育ということで報道しました。だんだん時間がたつと報道量が少なくなるのですが、ただここで高校生に対して行うべきことは、投票率の向上という問題なのか。あるいはシチズンシップをつくる、そのシチズンをつくる、つまりそこでそうした市民・国民をつくる、ということなのか。

 では、「国民とは何か」ということになりますが、日本では民主主義の前提である選挙で投票できる有権者、選挙民が選挙という事態になってもおたおたしないというのが、市民あるいは国民として最低限必要なことです。また、裁判員制度というものがありますが、これは抽選ですから、くじで裁判員に当たる可能性はあるのです。そうすると、そこでも驚かないようにしておくことは、ある意味で必要なのではないか。シチズン、つまり市民として国民として果たすべき義務、ある...
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