●シチズンシップ教育の背景と課題
シチズンシップ教育の課題というお話をします。シチズンシップ教育がなぜ出てきたのかといえば、投票年齢を18歳に引き下げるということがあったからです。それから、今まで有権者の啓発とか、あるいは有権者をどうやって選挙に行かせるかなど、どちらかというと上から目線の議論が多かったのですが、そのような中、シチズンシップ教育、あるいは主権者教育ということが注目されたということです。
一般的な背景としては何なのかといえば、若者の投票率が非常に低いということです。ですから、18歳に投票年齢を引き下げたとしても、低いままでずっと推移するとなると、投票率は全体的にゆがんだまま続くのではないかという危機感があったのです。
●大学生になると投票率が下がる理由
実際、2016年の参議院選挙から18歳の投票が始まったわけですが、この時驚くべきことに18歳の投票率は高かったのです。18歳ということは、高校生がかなり入っています。この高い数字がそのまま推移するかどうかということで、翌年の2017年、衆議院選挙が行われました。その衆議院選挙の時、2016年の時の18歳は19歳になっているわけですが、投票率を見るとがくっと落ちています。一方、18歳の投票率はそこそこ維持されています。これは高校における主権者教育、あるいはシチズンシップ教育はある程度功を奏したのではないかと思います。
私も学生たちにいろいろ聞いてみたのですが、1つ分かったのは(1人暮らしをしている場合に)住民票を動かしていないということです。そうだとすると、元の自宅に行って投票するかというと、例えば地方から来ている学生は、投票権がどこにかすらよく分からないのでそのまま過ごしてしまいます。かなり意識の高い学生の中には、不在者投票の手続きはかなり複雑なのですが、これを行って投票しました、という人もいました。そういう意味でいうと、大学生になってから投票率が下がるということは、不在者投票というある意味テクニカルな問題が1つあります。
●なかなか解決できない投票率問題
ただし、一般論として日本の投...