●自分自身の“北極星”を具体的にしていく
本講座の内容に入っていきたいと思います。
最初に、皆さん、「北極星、見えていますか」。皆さん自身は、どこに向かいたいと思っていらっしゃるのでしょうか。
ビジョンというと、すごく大きな、例えば孫正義さんのような企業家が考えるもので、自分たちのものではないと思われる方も多いかもしれません。私は、ビジョンとは北極星のようなものだと思っています。
皆さん自身が、「こういう世界をつくりたい」「こういう方向に向かっていれば、自分自身が幸せだと思える」、そういう絵をまず持っているか持っていないか。先が見えない世の中の中で自分自身がどこに向かっていいのか分からないと、人は非常に迷います。しかし、「こういう方向に向かいたいのだ」ということが見えていれば、少し回り道をしたとしてもそれは楽しい回り道になれると思うのです。そういう意味で、皆さん自身の“北極星”がもし見えてないのであれば、それを具体的にしてみましょうかというのがこの講座の内容です。
この北極星なのですが、星なのであんまりクリアに見えているものではありません。実際、ビジョンを持っている人というと、典型的には企業家などが思い浮かぶと思います。けれども、そういう方の特徴というと、実は目に見えないもの、現状では存在しないものを具体的に頭の中に描いて、あたかもそれを見たかのように話せるということです。ビジョンを描く力というと、目に見えないものを見る、そしてそれを具体的にするところがそのコアのスキルになります。
●世の中で一番知られていない「ビジョンの真実」とは認知の技術
ここまでいわゆるビジョナリーな人について話をしてきましたが、「あなたはビジョナリーですか」と聞かれたら、多分99パーセントの人はビジョナリーじゃないと答えるでしょう。けれども、このビジョナリーな人をよく分析していくと、実はいくつかの特徴があることが分かります。
一つ目は、目に見えない未来の像を見ながら、現実を語ることができること。また、二つ目は、そのためには、自分の内から湧き出る動機で、現在存在しない獣道を作っていけること。三つ目は、実現するか分からない未来を自己予言的に語り、語ったものを結果的に実現させていくこと。こういうことができるというタイプの人が、ビジョナリーな人だと思います。
そう考えると、実は私が一番ポイントだと思うのは、自分の中から湧き出る見えない動機を、見えるものにするというところです。自分の中で一旦見えていれば、それは現実に変わるので、具体的にしていくことは可能になります。そう考えると、実はビジョナリーになるかならないかというのは、人としての特性だけではなく、むしろ目に見えないものをどう認知するかという認知の技術なのではないか。そこがビジョンについて世の中で一番知られていない真実だと、私は思っています。
●世の中の思考を4つに分類
では「目に見えない自分のビジョンを形にする」というのは、どうやればいいのでしょうか。世の中にはいろいろな思考法があるので、その思考法との位置付けの中で説明していきたいと思います。
まず世の中の思考をあえて4つに分類します。縦軸を課題解決として、誰かの課題を解決したいから始まるものと自分のやりたいことから始まるものということで、それぞれVision-Driven(内的駆動)とIssue-Driven(外的駆動)という軸に切ります。横軸をすでにあるものを効率化する、もしくはより大きくしていくというもの(効率)と、ないものを創るというもの(創造)ということで、1→∞(無限大)と0→1という軸に切ります。
例えば、よくいうPDCA(plan-do-check-act)を回すという「改善思考」は、1を無限大にする課題解決の思考法になります。
続いて「戦略思考」ですが、これはよくMBAでも大事にされている思考だと思います。目的を設定するというところは、自分のビジョンから始まります。どうなったら勝つかということが必ずしも規定されているわけではないので、初動というのは実は、自分たちのやりたいことからスタートするというのが戦略思考の特徴です。ただし、それを実現するために資源を棚卸し、それを再構築・再配分して、やった内容を検証していくということで、論理的なプロセスをたどります。このように、Vision-Drivenでスタートをするけれども論理的に考えていく、というのが、戦略思考の特徴になります。
それに対してですが、皆さん、最近「デザイン思考」という言葉をお聞きになったことがあるかもしれません...