テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

創造的思考と通常業務の違いは「突然変異」を生むかどうか

ビジョン講座「直観と論理をつなぐ思考法」(4)創造的思考の実践

佐宗邦威
戦略デザインファームBIOTOPE 代表
情報・テキスト
創造的思考について「新たな発想をするために、発散と収束のプロセスを繰り返すことで、思考をジャンプさせる思考法」と定義する佐宗氏。では、「創造的思考のモード」に入るために、どのようなことを心がければ良いのだろうか。創造的思考の3つの原則として、「手で考える」「体感覚→視覚→言語」「クリエイティブテンション」を挙げ、それぞれ豊富な実例を交えて解説する。(全8話中第4話)
≪全文≫

●創造的思考は発散と収束により思考をジャンプさせる方法


 ここで創造的思考について、簡単にご紹介しましょう。原則は3つあります。1つ目は「手で考える」こと。2つ目が「体感覚→視覚→言語」という思考の順番。3つ目が「クリエイティブテンション」になります。

 創造的思考、クリエイティブとは何か。皆さん、なんとなくイメージでは分かると思うんですが、あえてここで定義をすると、「新たな発想をするために、発散と収束のプロセスを繰り返すことで、思考をジャンプさせる思考法」ということです。これが創造的思考です。

 皆さんのいわゆる通常の業務だと、何かの情報があって、ワークフローがあって、ワークフローがあることで、安定してアウトプットを作っていく、というものが当たり前と思います。これは、いわゆる「再現可能性」を上げていくことを大事にした、科学的な働き方になるのですが、こういうワークフローとかマニュアルをベースとした仕事のやり方では、構造的に新しいものが生まれてくるということは起こり得ません。

 一方、創造的思考はインプットをしたものに対してジャンプをします。情報をいっぱい集めて、それをバラバラにして組み替え、最後はアウトプットとして落と込んでいく。こうしたダイヤモンド型の思考になることによって、「突然変異」を生んでいく。そのための思考法ですので、通常の業務と創造的思考は、ジャンプを生むか、ジャンプを生まないで安定的な思考をするかという意味で、全然違うものになります。

 これをイメージしたのがスライドの図です。創造的思考のプロセスは、基本として「非線形」といわれますが、「AだったらB」というようなことにはならないのです。最初は何か「やりたいことがある」という動機からスタートして、グルグルグルと手で動かしながら、あるいはもやもやしながらも模索し遊んで考えていく中で、だんだんとシンプルなコンセプトが見えてきて、ある程度見えてきたら、焦点を合わせて具体的に落と込んでいく。そのような思考法になります。特に前段のところでは、いろいろな試行錯誤をしてみる、むしろ無駄打ちしてみる、遊んでみる、そういうことが大事です。


●創造的思考の3つの原則


 この原則についてそれぞれご紹介しましょう。1つ目が「手で考える」というプロセスについてです。

 「コンストラクショニズム(構築主義)」という考え方が教育の世界にはあるのですが、手を動かしながら考えていくことで、自分が今まで見えてこなかったものが見えてくるという考え方です。

 具体的には問いかけからスタートします。「何とかを作って下さい」ということで、例えば「未来の街を作って下さい」と言われ、「未来の街って何だ」と思いながら、とりあえずいろいろとスケッチしてみたり、レゴを使って考えてみたりします。考えると、「これ、未来っぽいな」というものが見えてきて、作ったものについて誰かに語ります。すると、「それって未来なの? 俺はこれが未来だと思うのだけど」と言われ、他の人がそう思わないのなら、何故自分はこれを未来だと思ったんだろうと考えながら、自分が作りたかったものの本質がより見えてくる。こうした「問いかけ→作る→対話する→振り返る」というプロセスを、手を動かしながら進めていくことで、自分自身の潜在意識の中にあるビジョンが見えてくるのです。

 ということで、以上が、手を使って考えることで今までになかったものが生まれてくるメカニズムになります。


●手を動かすことによって創発的な脳の特徴を生かすことができる


 実際、手を動かすことは非常に有効で、これは人間の脳の構造からみても非常に理にかなっています。人間の脳の特徴として、脳の複数の部位、例えば前の方が言語を扱うとか、後ろの方はイメージを扱うとか、首の方に近い小脳だと体の感覚を扱うというように、対象の分野が分かれているのですが、いろんな分野が同時につながることによってひらめきを生むというのが、人間の脳のメカニズムになります。

 手を動かしながら考えるというのは、実は体を動かしながら頭を使うことになるので、複数の部分、例えば視覚も体の感覚も言葉も、全て使うということになります。そうすると、自然発火が起こりやすくなる。具体的には、人間が持っている、創造的・創発的な脳の特徴を生かすことができるという意味で、非常に有効です。

 スライドは、ペンフィールドのホムンクルスという、脳科学者がつくった模型です...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。