●気づけば「他人モード」ばかりで、「じぶんモード」が非常に少ない
では始めますが、第一部として「余白」というテーマからいきたいと思います。
「先のことを考えている暇がない」、これは忙しい現代の中で多くの人が感じている課題だと思います。そこで出てくるキーワードが「余白」になります。
“あなたは、今、何割の時間を「じぶんモード」で生きているでしょうか”
毎日朝起きて、例えばスマホを見て、そこから(今でいうとテレワークかもしれませんが)通勤をしたり、ZoomミーティングやTeamsのミーティングに参加したり、いろいろな書類のやりとりをしたりして、仕事が終わって帰ってきて、それからまたスマホを見て、もしくは子育てをして、そのようにして過ごしていく日常の中で、皆さん自身が、皆さん自身から生まれるやりたいことにアクセスしている時間はどのくらいあるのか、というのがこの言葉のポイントになります。
スライドに「他人モード」「じぶんモード」と書いているのですが、「他人モード」は例えば、部署で決められた仕事をやっているとか、自分が惰性で見ているSNSのいいねとかシェアを見ているとか、何気なくつけたTVのニュースを見ているとか、とりあえず付き合いで飲みに参加しているなど。これらはいずれも、ある種受け身の情報ですね。他の人を起点として出てきた情報に対して、自分が何かしらリアクションをしている。これが「他人モード」です。
それに対して、「じぶんモード」は、とりあえず空白の時間があったときに自分はこれをやっていると楽しいという趣味の時間とか、あえて自分の内面に向き合ってみようという、瞑想してみたり日記を書いてみたりする時間とか、誰にも求められていないのに「こういうプロジェクトをやっている」というマイプロジェクト(マイプロ)とか(あるいは副業とかもそれに当たるかもしれません)、会社の中でも自分自身で作った仕事とか、誰にもあるいは上司からも言われていないのに、自分自身で立ち上げた仕事とか。このあたりは「じぶんモード」です。
こうなったときに、私たちは情報爆発の世の中で生きているので、ほとんどの時間は、実は他人が発信した情報をもとに自分がリアクションしています。そうすると、気づけば他人のやりたいことで自分の中がいっぱいになっていて、自分自身がやりたいこと、自分自身の起点の情報、もしくは考えている時間は非常に少ない、ということになっている。それが今の時代の特徴だと思います。
●なぜアーティストが参考になるのか
ここで参考になるのがアーティストです。実際に誰にも求められていない絵を世の中に出して、それをもとに世の中に自分の考え方や世界観、あるいは新しい考え方を提起していく。そういういわゆるアーティストは、最初にまず自分のアトリエを整備し、自分のキャンバスを用意します。そして、その上で展示会を設定して、「この展示会に出そう」ということで制作をスタートさせる。これが、新しいものを作っていくアーティストの特徴です。
このようにアーティストは目に見えないものを形にしていくわけですが、いきなりコンセプトから考えていくというのは難しいことです。ですので、まず制作する環境と、制作する時間、それを表現する、提示する場所(スペース)を作るところから始まるというのが、アーティストの特徴になります。
ビジョンも同じです。ビジョンも、目に見えないものを描いていくものなので、どのスペース(環境)で皆さん自身が考えていくか。それをどういう場所(スペース)で表現して誰かに伝えていくか。そういうところから考えていくと、実は物事は形になりやすいのです。
●「ビジョンのアトリエ」~スペース・道具箱・思考法を組み合わせる~
このような「余白」を、私は「ビジョンのアトリエ」というコンセプトで呼んでいます。まだカタチになっていない潜在的な動機にアクセスしたり、創作や表現などの創造的なアプローチを使って、自らのビジョンを作品にしてみるスペースを作ることが、一丁目一番地になります。
例えば、スペースという意味でいうと、日常における「じぶんモード」の時間として、例えば朝出勤する前にカフェで一時間、何も仕事と関係ない時間を過ごす。こういう時間を作る。次は道具箱です。モチベーションが上がる道具として、例えばスケッチブックがあります。スケッチブックを目の前にしていると、ワクワクする自分のことを考えたくなる。そういう形でモチベーションを上げていく。あとは思考法です。そうした中で自分が目に見えないものを形にしていく。そのための思考法のことです...