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第一印象が悪くても大丈夫!「ゲイン効果」とは何か

組織心理学~「不満」を生かす(2)ほめ方とゲイン効果

山浦一保
立命館大学スポーツ健康科学部・研究科 教授/博士(学術:広島大学)
情報・テキスト
一般的に「ほめればいい」という風潮は広がっているが、「ほめ方」は難しいテーマである。ただ「ほめればいい」ということではなく、そこには前提条件があると山浦氏は言う。それはいったいどのような条件なのか。また、「ほめ方」が下手な人、あるいは第一印象が良くない人はどうすればいいのか。キーワードは「ゲイン効果」である。実験室実験をもとに考察を深めていく。(全2話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:04
収録日:2023/06/21
追加日:2023/12/15
≪全文≫

●「ほめ方」にまつわる実験室実験


―― あと、お聞きしたいのが、「ほめ方」です。これもけっこうほめ方によって効果がある場合と逆効果になってしまう場合がある。ほめ方も、いろいろ難しいですよね。ここは先生、どういうことになりましょうか。

山浦 永遠のテーマですね。こちらは本当に企業、特に上司の方が悩んでいるし、スポーツのコーチの方々も悩んでいる。本当に昔からあるテーマだと思いますが、とても難しいですね。結論から申し上げると、ただほめるだけではいかない(ということです)。

―― また難しい結論ですね。これはどういうことでしょうか。

山浦 ある企業との共同研究で、実験をしたことがあります。そのときは、実験室の中にいかにも職場風の環境をつくり、本当に作業をするというシミュレーションを行う実験室実験を行って導き出した結論です。

 一般的には「ほめればいいよ」という風潮がすごく広がっていますが、私はそれを懸念しています。そうではないことだって、(あるいは)そうではない人だっているでしょう、ということです。実験の結果は、実はほめればほめるほどモチベーションは上がりました。

 そうであれば「ほめればいい」ということになりそうですが、実は隠し技として、もう1条件作っていました。その条件は、「信頼できないと思っている上司・部下関係を作る」ことでした。

 先ほどの結果は、良好な関係が作られているときに、目の前で作業している様子を見て、リーダーの方が「今、ここを工夫してやったでしょう。すごく良かったよ」という一言を言った場合、モチベーションはどんどん上がるということでした。けれども、残念ながらそうではない職場や人間関係の場合もありますよね。

―― おっしゃる通り。

山浦 なので、その条件を潜り込ませてみました。その条件下では、リーダーに同じ言葉をかけてもらいますが、言葉をかけられた部下の方は喜ぶどころかモチベーションが下がり、停滞したまま終わったのです。

 そういうことなので、「ほめればいい」ということではなく、それには前提条件がある。要するに、人間関係が作られた上で前向きな言葉をかけると、「よし、頑張ろう」と責任感を持って取り組むことができるようになる。しかし、もともと関係性ができていない、むっつりした関係なのに、いきなり仕事の様子を見てリーダーさんから「良かったよ、今の」と言われても、「えっ、次は何が起きるんだろう。どんなおっかない仕事が降ってかかるんだろう」と疑ってかかってしまう。ちょっと様子を見ようとか、控えめにしようというような警戒心が出てくるようで、モチベーションは上がらずに終わるということです。


●ほめ方の下手な人には「翻訳家」が必要


―― これは大変難しいと思うのですが、「ほめなさい」というのは物理的にできますね。「ほめてくださいね」と言ったら、「分かりました」と言える。しかし、「良好な人間関係を作りなさい。信頼関係を作りなさい」というのは、リーダーの人からすると非常に難しい部分もあると思います。

 「なんで俺ってこんなに嫌われちゃうんだろう」とか「一生懸命やっているつもりなのに…」という人に限って、心理学的な部分でも悪いタイミングでほめてしまい、信頼度を下げたりする。間違いなくそういう人もいると思うのです。

山浦 地雷を踏むパターンですね。

―― 「なんでこの人、一番悪いタイミングでそういうことを言うかねえ」と、周りの人はみんな思ってしまう。その人は一生懸命やっているのだけれども、そうなってしまうというケースもあると思います。「ほめりゃいいってわけでもないんだね」となると、そういう人はどうすればいいですか。

山浦 難しいですね。翻訳家も必要かなと思います。

―― 翻訳家ですか。

山浦 はい。最後のお話からすると、本人は一生懸命ほめようと思ってほめたのだけれども、地雷を踏んでしまった、うまく受けとめてもらえなかった、というパターンは、周りの方の目には「ほめようと頑張っている」と見えることもきっとあると思うのです。(そこは)多様性ですから。(つまり)いろいろな目線がありますから。

 なので、それに気づかれた(周りの)方は、「(あのリーダーは)ほめようと思っているんだよ、精一杯なんだよ」というように、ぜひ翻訳していただきたいと思います。

―― 「あれが彼(リーダー)の精一杯だよ」と。

山浦 そうです、そうです。だから、なんとか頑張って、「(彼は)本当にいいと思ったときしか、ああいうふうには言わないから、素直に受けとめていいと思うよ」と言ってくれる翻訳家に出てきていただきたいと思います。

 (私は)リーダーも救われる立場、サポートされる立場の一人だと思っています。リーダーはいつも非常に頑張っておられます...
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