●「ほめ方」にまつわる実験室実験
―― あと、お聞きしたいのが、「ほめ方」です。これもけっこうほめ方によって効果がある場合と逆効果になってしまう場合がある。ほめ方も、いろいろ難しいですよね。ここは先生、どういうことになりましょうか。
山浦 永遠のテーマですね。こちらは本当に企業、特に上司の方が悩んでいるし、スポーツのコーチの方々も悩んでいる。本当に昔からあるテーマだと思いますが、とても難しいですね。結論から申し上げると、ただほめるだけではいかない(ということです)。
―― また難しい結論ですね。これはどういうことでしょうか。
山浦 ある企業との共同研究で、実験をしたことがあります。そのときは、実験室の中にいかにも職場風の環境をつくり、本当に作業をするというシミュレーションを行う実験室実験を行って導き出した結論です。
一般的には「ほめればいいよ」という風潮がすごく広がっていますが、私はそれを懸念しています。そうではないことだって、(あるいは)そうではない人だっているでしょう、ということです。実験の結果は、実はほめればほめるほどモチベーションは上がりました。
そうであれば「ほめればいい」ということになりそうですが、実は隠し技として、もう1条件作っていました。その条件は、「信頼できないと思っている上司・部下関係を作る」ことでした。
先ほどの結果は、良好な関係が作られているときに、目の前で作業している様子を見て、リーダーの方が「今、ここを工夫してやったでしょう。すごく良かったよ」という一言を言った場合、モチベーションはどんどん上がるということでした。けれども、残念ながらそうではない職場や人間関係の場合もありますよね。
―― おっしゃる通り。
山浦 なので、その条件を潜り込ませてみました。その条件下では、リーダーに同じ言葉をかけてもらいますが、言葉をかけられた部下の方は喜ぶどころかモチベーションが下がり、停滞したまま終わったのです。
そういうことなので、「ほめればいい」ということではなく、それには前提条件がある。要するに、人間関係が作られた上で前向きな言葉をかけると、「よし、頑張ろう」と責任感を持って取り組むことができるようになる。しかし、もともと関係性ができていない、むっつりした関係なのに、いきなり仕事の様子を見てリーダーさんから「良かったよ...