『源氏物語』を味わう
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
美しい形容詞の使い分け…『源氏物語』の表現を味わう
『源氏物語』を味わう(3)形容詞からの楽しみ方
林望(作家・国文学者)
『源氏物語』はストーリーだけでなく、文章にも微細な表現の妙がある。その一つが形容詞の使い方で、人物によって形容詞を使い分けている。さらに同じ光源氏でも、批判的な意味を込めたいときには使う形容詞を変えているのだ。そこで今回は「きよら」と「きよげ」という形容詞に注目し、その違いを謹訳と原文で読み解く。(全8話中第3話)
時間:12分17秒
収録日:2022年2月22日
追加日:2022年7月4日
≪全文≫

●夕顔のかわいらしさは「らうたし」


 では『源氏物語』の楽しみ方のお話をします。今日は少し専門的というか、やや古文解釈的なお話をしたいと思います。

(紫式部は)非常に非凡な才能を持っていて、『源氏物語』はストーリーテリングとしてストーリーの展開だけで見てもすごく面白いですが、それだけではありません。ストーリー全体をマクロな面白さとすれば、非常に微細な表現の妙ともいえるミクロな面白みもあります。これが『源氏物語』を一流の文学たらしめている所以ではないかと思います。

 今日はその一つの例として、形容詞の使い方についてお話しします。『源氏物語』では形容詞が非常にセンシティブに使われています。例えば女の人の魅力にしても、いろいろあります。同じ「美しい」でも、ただ単に美しいというだけでなく、「らうたし」という形容詞もあります。「らうたし」は夕顔や宇治の中君(うじのなかのきみ)によく使われ、特に夕顔に最も使われます。

「らうたし」は子どものようなかわいさや、ちょっと病弱だったり、弱々しい人に対するかわいさです。いたわってあげたい、どうしても手を添えてあげたくなるかわいらしさが「らうたし」です。夕顔はその意味で、ちょっと弱々しいところがあり、男としては何かしてあげたい。それが「らうたし」です。

 だから夕顔は、死んでからその死体の表現もみな「らうたし」と書いてあります。死体をかわいらしいというのは、よほどのことです。

 正妻の葵上には「うるはし」という形容詞が使われています。「うるはし」は、まったくかわいげがありません。完全無欠な完成さのことです。そのように一人一人を表現するにあたり、形容詞をうまく使い分けているのです。


●「きよら」と「きよげ」の使い分け


 そうした中で一つの例として、形容動詞「きよらなり」の「きよら」と、形容動詞「きよげなり」の「きよげ」の使い分けについて、お話ししたいと思います。

 いずれも「清らかである」「汚れがない」を指す「きよし」という形容詞の語幹「きよ」に付けたものです。「ら」という状態を示す接尾語が付くと、「きよらなり」という形容動詞を形成します。

 この「ら」と「げ」の違いが非常に大きく、沖縄語で「美ら海」(ちゅらうみ)という言葉があります。あの「ちゅら」は、「きよら」が訛った「ちゆら」のことです。沖縄の海は本当に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿(1)政治家・石原慎太郎の源流と核の問題
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿…対比で見えてくる現代的課題
片山杜秀
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
音楽の父バッハ…なぜ「音楽」が西洋でリベラルアーツなのか?
樋口隆一
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
なぜ「てふてふ」が蝶々?日本語の変遷を追う…まずは万葉仮名から
釘貫亨

人気の講義ランキングTOP10
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(6)世界の英雄神話とその構造分析
知恵か腕力か?…オデュッセウス、スサノオ、アルジュナなど世界の英雄たちの栄光と悲劇
松村一男
編集部ラジオ2026(31)鶴見太郎先生の「公開収録」のご案内
【公開収録のご案内】鶴見太郎先生:ユダヤ人と世界史…その歴史の教訓とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
Microsoft Copilot~AIで仕事はどう変わるか(1)「生成AI」の画期性
「生成AI」実装の衝撃…人工知能の歴史と特長
渡辺宣彦
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(2)ならず者国家・ローマ
サビニ人略奪に見られる初期ローマの「ならず者」的性格
本村凌二
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸