『源氏物語』を味わう
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
光源氏の最愛の人・紫上、幸不幸が反転する激動の後半生
『源氏物語』を味わう(7)光源氏の裏切りと紫上の救済
林望(作家・国文学者)
光源氏の最愛の人だった紫上の一生は、幸福と不幸があざなえる縄のようにやって来るものだった。10歳で源氏のもとへ連れてこられたが、手厚くかわいがられて育った。源氏が明石の君とのあいだに子どもをなしたのは紫上にとって裏切りではあったが、源氏にとっては、そのことが逆に紫上こそ一番愛すべき人だと確認することにつながるのである。(全8回中第7話)
時間:11分49秒
収録日:2022年2月22日
追加日:2022年8月1日
≪全文≫

●紫上にとって光源氏のもとに連れてこられたのは一つの幸福


『源氏物語』の深読みの巻ですが、今日は一番大事なことをお話ししようと思います。紫上(むらさきのうえ)についてお話をします(編注:今回から2話に分けて)。

 紫上は按察使の大納言(あぜちのだいなごん)の孫にあたります。按察使の大納言の娘が紫上の母で、『源氏物語』の中ではすでに死んでいます。仕方ないので按察使の大納言の北の方にあたる尼君(あまきみ)という、お祖母さんが紫上を育てています。

 光源氏はマラリアに罹り、自分の兄にあたるお坊さんの祈りで治してもらおうと、兄のいる北山にやって来ます。そして山の上から眺めていると庵を見つけたので、面白そうだと覗きに行きます。これは「垣間見」といって、『源氏物語』にはそうした覗きがしょっちゅう出てきます。

 すると、すごくかわいらしい女の子を見つけました。10歳ぐらいのこの少女を見て、「このかわいらしい少女は大きくなったら、どんなに美しいだろう」と思います。結果からいえば、藤壺(ふじつぼ)の姪にあたるので、そこに惹かれて引き取ります。源氏は一方的にこの女の子を見そめて、親の承諾も得ないで連れて来たのです。つまり、紫上は源氏に対して何の愛情もない、非主体的な関わり方なのです。ただし、誰も気がつかないうちに源氏に連れてこられたのは、一つの幸福でもあります。ある意味、源氏のやり方はひどいけれど、いろいろな男の目に触れないうちに源氏の庇護下に入り、源氏に本当に手厚く、手の中の玉のようにかわいがって育てられたのですから。そのように紫上の一生は、幸福と不幸があざなえる縄のように表裏一体になっているのです。

 そして(第4話で)少し読みましたが、新枕(にいまくら)はというともうびっくり仰天で、「こんなにいやなことはない」と思うのです。非常にかわいそうといえばかわいそうですが、これは紫上だけではなく、多くの場合、そういうことだったでしょう。この時代の女性は12~13歳で結婚して子どもを産むことも多いわけですし、本当に恐ろしいことですが、ずいぶんの人がお産で命を落としました。よって、『源氏物語』でお産は薄気味の悪いこととして描かれています。

 しかし(紫上は)不妊でした。これはとても不幸なことですが、不妊で子どもがいなかったために、明...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
中世ヨーロッパの基礎的な学問「7自由学科」の一つが音楽
樋口隆一
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(4)5人の皇帝と現代中国
特筆すべき5人の皇帝…中国史を知らなければ現代中国もわからない
宮脇淳子
編集部ラジオ2026(23)上半期人気ランキングBest30
【編集部ラジオ】令和8年上半期人気ランキングBest30
テンミニッツ・アカデミー編集部
老子の神髄(9)ウェルビーイングと東洋思想
ウェルビーイングを東洋思想でどう考えるか?…大事な二つの教え
田口佳史
日本の財政の真実を検証する(4)日本の台所事情と財政の本義
「1秒間に41万円?」…この数字はいったい何を意味するか?
宮本弘曉
中国春秋戦国時代と始皇帝(3)戦国時代初期――戦国七雄と合従連衡
戦国七雄とは?合従連衡とは?…各国の勢力拡大と小国家の運命
鶴間和幸
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(5)キリスト教と反ユダヤ思想
ユダヤ人迫害を生んだ「権力者・ユダヤ人・民衆」の三者関係
鶴見太郎