『源氏物語』を味わう
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
『源氏物語』紫上の死…紫式部が描くもっとも幸せな最期
『源氏物語』を味わう(8)最愛の人・紫上に対する鎮魂歌
林望(作家・国文学者)
光源氏の正室・女三の宮は、頭中将の息子・柏木とのあいだに不義の子を産むことになる。源氏は女三の宮を女として顧みることなく、ここでも紫上は最終的に救われる。やがて死を迎える紫上だが、何の苦しみもなく、源氏をはじめ愛する人たちに囲まれて死んでいく。こんな幸せな死に方をした女性は、他には出てこない。紫上の死後、源氏は腑抜けになってしまうのだが、このこともこれ以上ない紫上に対する鎮魂歌である。(全8話中第8話)
時間:8分47秒
収録日:2022年2月22日
追加日:2022年8月8日
≪全文≫

●女三の宮が不義の子を産んだことで最終的に救われる紫上


 しかし、女三の宮(おんなさんのみや)には、頭中将(とうのちゅうじょう)の息子の柏木(かしわぎ)が無理やり言い寄ってきます。6年前だったでしょうか、たまたま蹴鞠の庭でふと女三の宮を見かけて、すっかり恋心になったのです。そして、病気になった紫上が六条院から実家筋の二条院に引き取られ、病気の養生をしている時です。光源氏がそちらに行っている暇に、柏木が通ってきて密通してしまうのです。

 この密通によって、子どもができます。かつて藤壺(ふじつぼ)と子どもができた、源氏自身が犯した大きな罪が、柏木の不義によって因果応報の目を見るのです。つまり、女三の宮は源氏の正妻として来たけれども、女としては源氏から一度も顧みられず、罪の子を産んでしまうという非常に悲惨な目に遭うのです。これによって紫上は、やはり最終的に救われるのです。

 このように紫上は何度も何度も苦しい思いをするけれど、最終的に救われるのです。その紫上が死ぬ場面を、最後に読んでみたいと思います。

「御法(みのり)」の巻で、「中宮は、参りたまひなむとするを」というところです。

《中宮は、参りたまひなむとするを、今しばしは御覧ぜよとも、聞こえまほしう思せども、さかしきやうにもあり、内裏(うち)の御使(つかひ)の隙(ひま)なきもわづらはしければ、さも聞こえたまはぬに、あなたにもえ渡りたまはねば、宮ぞ渡りたまひける。

 かたはらいたけれど、げに見たてまつらぬもかひなしとて、こなたに御しつらひをことにせさせたまふ。〈こよなう痩せ細りたまへれど、かくてこそ、あてになまめかしきことの限りなさもまさりてめでたかりけれ〉と、来(き)し方あまり匂ひ多く、あざあざとおはせし盛りは、なかなかこの世の花の薫(かを)りにもよそへられたまひしを、限りもなくらうたげにをかしげなる御さまにて、いとかりそめに世を思ひたまへるけしき、似るものなく心苦しく、すずろにもの悲し。》

 このあと少し紫上や源氏が歌を詠み交わすところがありますが、略します。


●釈迦の入滅にも似た、紫上の幸せな死に方


《「今は渡らせたまひね。乱り心地いと苦しくなりはべりぬ。いふかひ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
印象派の解体と最後の印象派展(1)セザンヌと印象派
印象派の画家に大きな影響を与えたセザンヌの構築的筆触
安井裕雄
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿(1)政治家・石原慎太郎の源流と核の問題
都知事、非核三原則…1970年・30代の慎太郎が書いていたこと
片山杜秀
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆

人気の講義ランキングTOP10
昭和の名将・樋口季一郎…ユダヤ人救出編(5)陸軍悪玉論の中の名将たち
武力を持ったエリート官僚たち…陸軍悪玉論と個々人の決断
門田隆将
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大
「ハイブリッド戦争」の実像…ロシアが考えていることとは何か?
廣瀬陽子
ウェルビーイングを高めるDE&I(1)人と組織を取り巻く環境変化:前編
人材はコストではない!人的資本経営が注目されている背景
青島未佳
編集部ラジオ2026(13)心の「柔軟性」を高めるヒント
【10minでわかる】心の「柔軟性」を高めるヒント
テンミニッツ・アカデミー編集部
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(1)ビジネスのヒントは歴史にあり
『失敗の本質』、中国古典…ビジネスのヒントを歴史に学ぶ
三谷宏治
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
三日坊主、部屋が片付かない…なぜできないか行動分析学で考える
島宗理