『源氏物語』を味わう
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「千古不易の恋」を描いた光源氏と女性たちの『源氏物語』
『源氏物語』を味わう(2)光源氏をめぐる女性たちの物語
林望(作家・国文学者)
『源氏物語』の本質は、光源氏をめぐる女性たちの物語である。登場して間もなく物の怪に殺される夕顔、ボロボロの屋敷に住んでいる末摘花、最後まで一番好きだった紫上、あわよくばものにしようとしたライバルの娘・玉鬘など、さまざまな女性が出てくる。そこには恐ろしい物語もあれば、コミック的な物語、ホームドラマ的な物語もある。さまざまな面白みをもった面白さの多面体が『源氏物語』である。(全8回中第2話)
時間:12分28秒
収録日:2022年2月22日
追加日:2022年6月27日
≪全文≫

●主人公というより、狂言回しの役割を演じる光源氏


 それでは『源氏物語』を少し読み解いていきます。『源氏物語』は、一筋縄ではいきません。いろいろな物語が混じっていますから。でもここでお願いしたいのは、漫画ではなく文章で読んでほしいということです。漫画やアニメだと一番大事なところがころっと落ちてしまいますし、イメージが固定されてしまいます。やはり一人一人のイメージは、読者が自分の心の中で作り上げることが望ましいと思います。

 今まで与謝野晶子や円地文子、谷崎潤一郎、瀬戸内寂聴など錚々たる作家による現代語訳が作られていますが、そういう現代語訳で読むのもいい。もちろん私の『謹訳 源氏物語』で読んでいただくのが一番嬉しいのですが。

 末摘花(すえつむはな)をめぐる物語も出てきます。彼女は常陸宮(ひたちのみや)という亡くなった宮様の一人姫で、非常に頑なで内気な、気の利かないお姫様です。ボロボロの化け物屋敷に住んでいるという話を源氏がふと聞きかじって、興味津々で口説くという話です。これについては、あとでまた詳しく話します。

 一番中心になるのは、やはり紫上(むらさきのうえ)の物語です。これについてもまた詳しくお話をしますが、紫上はこの作品の中で人間的に最も詳しく、最も美しく魅力的に描かれています。源氏は、最後の最後まで一番好きだったのは紫上だということが分かります。

 玉鬘(たまかずら)の物語は、(第一話で)少し言ったように夕顔の遺した姫君の話です。大きくなって乳母に連れられて太宰府のほうに行ったところ、とんだセクハラおやじに迫られて都に逃げ帰ってくる。そして長谷の観音様の巡り合わせで、源氏に見いだされます。

 源氏はまた悪い男で、頭中将の娘だと分かっているのに、自分の娘だと嘘をついて自分の手元に引き取り、あわよくば、ものにしようする。非常にセクハラおやじの源氏の話がいろいろ展開していきます。お琴の稽古をさせながら「どれどれ」などと言って、後ろから覆いかぶさって弾き方を教える。まさにセクハラです。

 それを紫上は知っていながら、大騒ぎしない。ひんやりと微笑んで見せるといった、すごくいい話です。ところがこれも最後には、鬚黒の右大将(ひげくろのうだいしょう)という一番の野暮天男にスッとさらわれてしまう。そういう物語...

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