『源氏物語』を味わう
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「千古不易の恋」を描いた光源氏と女性たちの『源氏物語』
『源氏物語』を味わう(2)光源氏をめぐる女性たちの物語
芸術と文化
林望(作家・国文学者)
『源氏物語』の本質は、光源氏をめぐる女性たちの物語である。登場して間もなく物の怪に殺される夕顔、ボロボロの屋敷に住んでいる末摘花、最後まで一番好きだった紫上、あわよくばものにしようとしたライバルの娘・玉鬘など、さまざまな女性が出てくる。そこには恐ろしい物語もあれば、コミック的な物語、ホームドラマ的な物語もある。さまざまな面白みをもった面白さの多面体が『源氏物語』である。(全8回中第2話)
時間:12分28秒
収録日:2022年2月22日
追加日:2022年6月27日
≪全文≫

●主人公というより、狂言回しの役割を演じる光源氏


 それでは『源氏物語』を少し読み解いていきます。『源氏物語』は、一筋縄ではいきません。いろいろな物語が混じっていますから。でもここでお願いしたいのは、漫画ではなく文章で読んでほしいということです。漫画やアニメだと一番大事なところがころっと落ちてしまいますし、イメージが固定されてしまいます。やはり一人一人のイメージは、読者が自分の心の中で作り上げることが望ましいと思います。

 今まで与謝野晶子や円地文子、谷崎潤一郎、瀬戸内寂聴など錚々たる作家による現代語訳が作られていますが、そういう現代語訳で読むのもいい。もちろん私の『謹訳 源氏物語』で読んでいただくのが一番嬉しいのですが。

 末摘花(すえつむはな)をめぐる物語も出てきます。彼女は常陸宮(ひたちのみや)という亡くなった宮様の一人姫で、非常に頑なで内気な、気の利かないお姫様です。ボロボロの化け物屋敷に住んでいるという話を源氏がふと聞きかじって、興味津々で口説くという話です。これについては、あとでまた詳しく話します。

 一番中心になるのは、やはり紫上(むらさきのうえ)の物語です。これについてもまた詳しくお話をしますが、紫上はこの作品の中で人間的に最も詳しく、最も美しく魅力的に描かれています。源氏は、最後の最後まで一番好きだったのは紫上だということが分かります。

 玉鬘(たまかずら)の物語は、(第一話で)少し言ったように夕顔の遺した姫君の話です。大きくなって乳母に連れられて太宰府のほうに行ったところ、とんだセクハラおやじに迫られて都に逃げ帰ってくる。そして長谷の観音様の巡り合わせで、源氏に見いだされます。

 源氏はまた悪い男で、頭中将の娘だと分かっているのに、自分の娘だと嘘をついて自分の手元に引き取り、あわよくば、ものにしようする。非常にセクハラおやじの源氏の話がいろいろ展開していきます。お琴の稽古をさせながら「どれどれ」などと言って、後ろから覆いかぶさって弾き方を教える。まさにセクハラです。

 それを紫上は知っていながら、大騒ぎしない。ひんやりと微笑んで見せるといった、すごくいい話です。ところがこれも最後には、鬚黒の右大将(ひげくろのうだいしょう)という一番の野暮天男にスッとさらわれてしまう。そういう物語...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
岡倉天心『茶の本』と日本文化(1)岡倉天心の生涯
岡倉天心の『茶の本』…世界に向けた日本伝統文化の発信
大久保喬樹
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「アカデメイア」から考える学びの意義(4)学びの3つのキーワード
より良い人生への学び…開かれた知、批判の精神、学ぶ主体
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編(2)神々のささやく世界
「神々のささやく世界」では神々の声が行動を決める
本村凌二
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規