『源氏物語』を味わう
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「夕顔の夢よ、もう一度」ユーモア物語「末摘花」の面白さ
『源氏物語』を味わう(6)ユーモア物語としての「末摘花」
林望(作家・国文学者)
『源氏物語』には「もののあはれ」を感じる場面だけでなく、爆笑また爆笑といった場面もあちこちに出てくる。常陸宮の姫君である「末摘花」の話もその一つである。ボロ屋敷に忍び込み、末摘花の仲を結んだ光源氏が翌朝、彼女の容貌をうかがおうと必死に横目で見て驚く場面には、誰もが大きな笑みをこぼしたのではないだろうか。ただし、そこで物語は終わらない。この後、末摘花はどうなったのか。そこにはホロっとさせる語り口があり、そこも『源氏物語』の一つの特徴なのだ。(全8話中第6話)
時間:13分01秒
収録日:2022年2月22日
追加日:2022年7月25日
≪全文≫

●「夕顔の夢よ、もう一度」――ユーモア物語「末摘花」の伏線


『源氏物語』の楽しみというお話を続けます。

 前回は「もののあはれ」を感じる、非常に愁嘆場ともいえる場面を読みましたが、そういう場面ばかりではなく、ユーモア小説作家としての才能もあるところが、紫式部の偉いところです。本当に爆笑また爆笑といった場面もあちこちに出てきます。今日はユーモア物語としての『源氏物語』の一つとして「末摘花(すえつむはな)」の話をします。

 末摘花は、故・常陸宮(ひたちのみや)の姫君です。源氏は「雨夜の品定め」の場面(帚木〈ははきぎ〉の巻)で、人知れぬ古い家に美しい姫がいて、それを発見して育てるのがいい、などと言っています。それが1つの伏線になっています。

 (末摘花は)ボロボロの屋敷に、もうフガフガしているような年老いた女房どもにかしづかれて一人ひっそりと住んでいるから、誰もここに姫君がいることを知りません。ところが、大輔の命婦(たゆうのみょうぶ)という女房がいて、彼女は源氏の屋敷に仕えているけれども、同時に末摘花の乳母子(めのとご)でもあります。そういう関係で、しかもちょっといたずら好きなのです。そこで、源氏が人知れぬ女に興味を持つと思い、からかい半分に常陸宮の姫君の話を吹き込むのです。

 すると、源氏は心の中に煩悩の雲が湧き起こり、どうしてもこの姫君に会わずにはいられなくなります。いろいろとすったもんだがありますが、なんとか大輔の命婦の手引きで常陸宮の屋敷に忍び込み、この姫君と仲を結びます。

 ただ末摘花は、何にも言わない。非常な引っ込み思案で恥ずかしがりで、源氏が何を言っても反応がないのです。拒絶しているわけでもないのですが、何も反応のない人で、源氏も「しょうがないな」と思います。でもせっかく一晩過ごしたのだから、どういう人だか見て帰りたいという、怪しい欲求が起こります。

 では、この常陸宮の姫君の驚くべき風貌の場面を読んでみましょう。その前のことですが、源氏は、夕顔という女性に会い、某院で一晩過ごすのですが、彼女は物の怪に取り殺されてしまいます。その翌朝、自分で手ずから蔀戸(しとみど)を上げて、庭を見るシーンがあります。

 これは夏のシーンですが、それと同じことを常陸宮の屋敷でもします。つまり「夕顔の夢よ、も...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子

人気の講義ランキングTOP10
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(4)消された歴史を掘り起こす
根本博の功績は台湾では消されていた…取材でいかに正史を変えたか
門田隆将
資本主義の再定義…哲学で考える(4)共感としての見えざる手
利とは、義の和である…なぜ道徳的なふるまいが企業活動に重要か
中島隆博
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(1)軍人の本義を貫いた根本博中将
ソ連軍から在留日本人4万人を守れ…内蒙古での「戦後」の激闘
門田隆将
地政学入門 歴史と理論編(7)戦争を起こさないための地政学
トゥキディデスの罠の教訓…大事なのは戦争回避の4ケース
小原雅博
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
編集部ラジオ2026(26)お盆とあの世を考える
【10min解説】特集で考える《お盆とあの世》の本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本の財政の真実を検証する(7)AIと長寿化&質疑応答
AI時代にこそ「熟達者の経験」が生きる&現状の日本経済の実情は
宮本弘曉
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ