『源氏物語』を味わう
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
『源氏物語』の名脇役・明石の入道の紅涙を絞る名場面とは
『源氏物語』を味わう(5)脇役の存在と「もののあはれ」
林望(作家・国文学者)
いい映画には名脇役の存在が欠かせないように、『源氏物語』にも味のある脇役がいろいろと出てくる。その一人が明石の入道だ。地方官だが、いずれ都で大きな権力を得たいと思っている彼は、そのために妻も娘も孫も都にいる光源氏のもとへ行かせ、自分は一人明石に残る。家族との別れの日の朝は、「もののあはれ」ともいえる、さりげないけれど名場面の一つである。(全8話中第5話)
時間:14分30秒
収録日:2022年2月22日
追加日:2022年7月18日
≪全文≫

●妻は皇族の孫


 こんにちは。では『源氏物語』のお話を続けましょう。

『源氏物語』は登場人物がものすごくたくさんいますが、その一人一人に際立った個性があります。同じような人が二人と出てきません。このあたりが、本居宣長などがたいへん褒めているところです。『水戸黄門』のようなステレオタイプの話だと、善玉・悪玉は決まっています。悪玉の悪代官と腹黒い商人がいて、キンキラキンの袴を履いた悪代官が袖の下を取るなどと、だいたい決まっているのです。(『源氏物語』には)そのようなステレオタイプの人物が全然出てこない。一人一人が本当に生きている人間のように別々に書き分けられている、と述べています。

 そうしたことが一流の文学の証です。千年も前に、ここまで人物をよく観察して、一人一人描き分けた。その才能や力は奇跡に近いと、私は思います。

 そこで今回は、『源氏物語』のいわゆる主人公たちとは別に、脇役も見てみましょう。

 いい映画には男の主人公、あるいは女の主人公の他に、いい脇役が出てきます。例えばかつては志村喬や宇野重吉といった名優が脇役を演じていました。すると、映画もたいへん味わいが出てきます。『源氏物語』にも、なかなか味のある脇役が出てきます。その中の一人、明石の入道(あかしのにゅうどう)についてお話をしてみようと思います。

 明石の入道はもともと大臣の家柄でしたが、少し偏屈で人と折り合いが悪く、宮中での折り合いも悪い。そのため近衛中将(このえのちゅうじょう)という高い地位を得ながら、わざわざ捨てて、自ら望んで播磨守という受領(ずりょう)、つまり地方官に格下げしてもらい、播磨国に下っていった。そんな変人奇人、偏屈者として出てきます。

 受領とはどういうものかというと、この時代の受領は地方官ですが、その地方の殿様のようなもので、いろいろと収入がたくさん入ってきます。地位は低く中級の貴族にすぎませんが、お金はすごくあります。これが日本社会の面白いところで、地位の高い人が必ずしもお金持ちではないのです。地位の高い人はそれだけ経費もかかるので、貧乏で借金だらけだったりもします。ところが、受領は中央の目が届かないところで好きなだけ蓄財ができるので、その多くが大変な大金持ちです。

 さて、彼には明石の君(あかしのきみ)という...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿(1)政治家・石原慎太郎の源流と核の問題
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿…対比で見えてくる現代的課題
片山杜秀
司馬遼太郎のビジョン~日本の姿とは?(1)1923年生まれの3人の作家
司馬遼太郎と日本人…まず遠藤周作、池波正太郎との比較で考える
片山杜秀
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
山上憶良「好去好来の歌」を読む(1)山上憶良に学ぶ国際感覚
8世紀を代表する知識人・山上憶良が感じたグローバリズム
上野誠

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(36)宮脇淳子先生「満洲史」講義の要点
【10min解説】「満洲史」はタブー?…そこから見えてくる教訓とは?
テンミニッツ・アカデミー編集部
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(6)認知症予防と健康寿命の延伸に向けて
フレイル・サイクルは回り出したら抜けられない!?負のスパイラルへの対処法
小川純人
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
ゼロからわかるメタバース(7)アバター対談〈下〉
アフォーダンス理論によるメタバース実体験のススメ
廣瀬通孝
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
なぜ「てふてふ」が蝶々?日本語の変遷を追う…まずは万葉仮名から
釘貫亨
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎