『源氏物語』ともののあはれ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
欲と情――「もののあはれ」を二分する本居宣長の議論とは
『源氏物語』ともののあはれ(5)「欲」のあはれと「情」のあはれ
板東洋介(東京大学大学院人文社会系研究科 准教授)
「もののあはれ」の原理的探究を行った本居宣長。『源氏物語』の「あはれ」を理解するには、宣長の「あはれ」論への理解が欠かせない。『排蘆小船(あしわけのおぶね)』『石上私淑言』『源氏物語玉の小櫛』『紫文要領』といった宣長の著書を読み解きながら、「欲」と「情」に二分されるという「あはれ」論を中心に、彼の議論の核心に迫る。(全5話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分40秒
収録日:2023年8月4日
追加日:2023年11月30日
≪全文≫

●「あはれ」の深さを分ける「欲」と「情」


―― 続きまして、先生に書いていただきましたのが、『排蘆小船(あしわけのおぶね)』のものと、『石上私淑言』ということでございますが、『排蘆小船』というのはどういうものなのですか。

板東 これは本居宣長がいちばん最初に書いた本といわれていまして、これは歌論です。『石上私淑言』と内容的にけっこうかぶるので、『排蘆小船』が宣長の最初の歌論の試作であって、5、6年した後できちっと書き直したのが『石上私淑言』です。

―― なるほど。

 では、早速読んでみたいと思います。まず『排蘆小船』のほうでございます。

 「欲と情とのわかちは、欲はただねがひもとむる心のみにて、感慨なし。情はものに感じて慨嘆するもの也」。続けて『石上私淑言』も読んでしまいますと、「いかにもあれ歌は情の方より出来る物也。これ情の方の思ひは物にも感じやすく、あはれなる事こよなう深き故なり。欲の方の思ひは一すぢにねがひもとむる心のみにて、さのみ身にしむばかりこまやかにはあらねばにや、はかなき花鳥の色音にも涙のこぼるるばかりは深からず」というところでございますね。

板東 ありがとうございます。これは宣長の「もののあはれ」の原理的な探求の中で、たしかにどんなものに触れた感動も「もののあはれ」というのだけれども、その中に深いものと浅いものがある。その中で歌とか、物語として表現されるタイプの「あはれ」と、そうではなく、浅くてあまり美しくない「あはれ」というものがあるという形で、「あはれ」を二分していく議論です。

 それを宣長は「欲」と「情」という2つに区分しています。『石上私淑言』のほうの引用にありますが、歌とか物語というのは欲ではなくて情のほうの表現であるとしています。

 具体的にどういうことかというと、次のイラストをご覧ください。

―― ここも先生がイラストでご紹介いただいております。

板東 ありがとうございます。宣長が「欲」といいますのは、一筋に願い求めるようなタイプのものです。つまり、例えば食べ物とか、人間が欲しがるお金、富、財宝といったものをわれわれが見たときに、われわれはそれを欲しいと思うわけですね。所有したい、自分のものにしたいと思う。まっすぐそれを欲しいと思う。それもたしかに感動の一部ではあるのだけれ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
百人一首の和歌(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
渡部泰明
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆

人気の講義ランキングTOP10
「進化」への誤解…本当は何か?(5)ダーウィンの生物紀行
ダーウィン「進化論」執筆の背景…娘の死と信仰との決別
長谷川眞理子
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(7)領国経営と秀長の統治能力
想像以上に有能――領民に慕われた秀長のリーダーシップ
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
歌舞伎はスゴイ(1)市川團十郎の何がスゴイか(前編)
市川團十郎の歴史…圧倒的才能の初代から六代目までの奮闘
堀口茉純
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
「幸福とは何か」を考えてみよう(1)なぜ幸せになりたいのですか
「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現
津崎良典
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文