『源氏物語』ともののあはれ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
本居宣長の説く「もののあはれ」の意味…心の動きとため息
『源氏物語』ともののあはれ(4)「もののあはれ」とは何か
板東洋介(東京大学大学院人文社会系研究科 准教授)
本居宣長は、歌も物語もその本質は「あはれ」というひと言で説明できると説いたわけだが、では「もののあはれ」とはいったいどのようなものなのか。また、なぜ宣長は「あはれ」に着目したのか。友人からの問いかけから始まったという宣長の「あはれ」探究をひも解き、『源氏物語』「紅葉賀」のシーンを例にその意味するところを解説する。(全5話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分05秒
収録日:2023年8月4日
追加日:2023年11月23日
≪全文≫

●叙情的な『源氏物語』の根本には和歌と同じ精神がある


―― この、歌と物語の連関性というのはどのように考えればよろしいわけですか。

板東 日本の物語がどのように発生したかというのはいろいろあって、叙事的な物語と叙情的な物語があるのです。

 叙事的なものは、例えば『竹取物語』とかのお話の面白さというか、竹から女の子が出てきたという異相、今でいうとSFやファンタジーに近いお話の面白さで勝負するものです。

 それとは別に叙情的な物語というものがあって、そちらでは変わったことは起きないわけです。同性の場合もありますけれども、ひたすら異性同士がひっついたり離れたり、相手に思いが届かなくて輾転反側したりということをつらつら書き連ねるジャンルがあるのです。

 いちばん古い形は『伊勢物語』ですけれども、『伊勢物語』をご覧いただいたら分かるように、もとのコアは和歌です。男女が思いを遂げられなかったり遂げたりする和歌があって、和歌に詞書きというものが添えられていて、これはどういう恋の場面でこの2人が詠ったものですという簡単な説明があるわけです。男と女がいて、親が許さないからこっそり会っていて、こんな歌を詠み合いましたとかと語っている。それをどんどん長くしていくと叙情的な物語になるのです。

 今の例でいうと、宣長の理解なのですけれども、『源氏物語』は後者の系列だということです。だから変わったことは起きないわけです。ちょっと悪霊が出てきたりもしますけれども、やはりコアなのは男女が美しい風景描写の中で綿々と思いを述べ合うことです。

 そうすると、叙情的な物語というのは、もともとの発端は歌に添えられた短い状況説明の詞書きだったので、(それらは)もともとは主として同じだということです。それと、奇想天外なお話を語っていく(叙事的な物語)ほどジャンルが違うので、歌道と『源氏物語』を代表とする物語というのはもともと一体だったということです。

 そこでずっと求められているのは、恋とか、エモーショナルな美しい風景描写であって、だから本質は同じなのだという理解です。

―― なるほど。そうなると日本の物語の理解も非常に深まってくるような感じがいたしました。


●友人からの問いかけをきっかけに始まった宣長の「あはれ」探究


―― 続きまして、先生に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
日本美術論~境界の不在、枠の存在(1)具象と抽象の共存
日本美術の特徴を示す矛盾した2つの要素とは?
佐藤康宏
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
印象派の誕生~8人の主要な芸術家
マネ、モネ、ルノワール…芸術家8人の関係と印象派の誕生
安井裕雄
岡倉天心『茶の本』と日本文化(1)岡倉天心の生涯
岡倉天心の『茶の本』…世界に向けた日本伝統文化の発信
大久保喬樹

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(4)トランプ大統領VS.中国
トランプ政権は実は与しやすい?…ディールで「時間稼ぎ」
垂秀夫