『源氏物語』ともののあはれ
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
光源氏の恋の動機…母の喪失と満たされない思い
第2話へ進む
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
板東洋介(東京大学大学院人文社会系研究科 准教授)
紫式部が著した『源氏物語』は、日本最大の古典文学として、長らく日本人に読み継がれてきた。しかし、その物語は、世に出た当初から高い評価を得ていたわけではなく、本居宣長をはじめ、さまざまな解釈をされてきた。そこで今回は、『源氏物語』のコアといえるスキャンダラスなそのあらすじを確認し、室町時代に再発見される貴族文化のエッセンスについて、一条兼良の言葉を紹介しながら解説する。(全5話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分46秒
収録日:2023年8月4日
追加日:2023年11月2日
≪全文≫

●『源氏物語』を「もののあはれ」で喝破した本居宣長


―― 皆さま、こんにちは。本日は板東洋介先生に「『源氏物語』ともののあはれ」というテーマでお話をいただきたいと思っております。板東先生、どうぞよろしくお願いいたします。

板東 お願いいたします。

―― 今回、『源氏物語』をいかに読むかということで、先生にお話をいただくわけですけれども、先生にとって『源氏物語』の魅力といいますか、読んでいくことの意味というのはどのようにお考えですか。

板東 お尋ねありがとうございます。私にとって『源氏物語』が面白いのは、少なくとも今に至るまで、この本は1000年以上、日本最大の古典として読み継がれているわけですが、ただ、ずっと読者たちが困ってきたことがある、つまりこれはいったい何なのだということです。

 54帖あって、まさに何10年にもわたって、おそらく3桁くらいの登場人物が登場するわけです。たしかに、特に女性を中心に多くの読者に感動を与えてきたわけですけれども、この長大な物語はいったい何を語ろうとしているのかということについては、あまりよく分からないのです。でも面白いという、一種謎めいたテクストとしてあり続けたのです。

 特に海外の学問とかを身に付けた、時代時代の知識階級、儒教や仏教を学んだ知識人たちが、例えばこれは仏教の無常の理を表現したものであるという説明をしたり、光源氏が不倫の恋をするので、自業自得の不幸な目に陥るから、このようにして人の道に背いてはならんということを主題にしているのであるとか、ずっと論じられてきたりしたわけです。

 ただ、今の話でお分かりのように、おそらくそんなふうに言っても、この本の面白さというのは説明しきれていない。何か分からないけれども、とにかくこの本は面白い。人に感動を与えるものであるということを1000年以上日本人たちは考え続けてきたわけです。その謎めいた、正体の分からなさ自体が面白いのではないかというのが私の理解です。

―― そのように多くの人、特に知識人が迷ってきた中で、今回の主題が「もののあはれ」ということですけれども、本居宣長が、ある意味では現代にも通じるような読み方のベースになる部分を提示したということですよね。

板東 その通りです。宣長以前の学者たちが、ああだ、こうだと儒教や仏教の理屈...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
岡倉天心『茶の本』と日本文化(1)岡倉天心の生涯
岡倉天心の『茶の本』…世界に向けた日本伝統文化の発信
大久保喬樹
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治