日本語と英語で味わう『源氏物語』
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世界で初めて英訳された『源氏物語』と日英同盟への影響
日本語と英語で味わう『源氏物語』(4)『源氏物語』をめぐる日英の歴史
『源氏物語』が初めて英訳されたのは1882年、末松謙澄という日本人によるものだった。当時、末松や岡倉天心などがロンドンにいたが、その後、20世紀初頭にアーサー・ウェイリーによっても翻訳された『源氏物語』は、日本と同盟を結んでいたイギリスが日本文化を理解する上で重要な作品だった。ウェイリーにとって『源氏物語』の何が画期的だったのか、またイギリスがどのように本作を受容したのかを振り返る。(2024年2月18日開催「大人の学びフェス」講演〈「源氏物語」の深い魅力〉より、全5話中第4話)
時間:13分21秒
収録日:2024年2月18日
追加日:2024年11月4日
≪全文≫

●サイデンステッカーの忠実な英訳が『源氏物語』への入り口


キャンベル 江戸時代にも、その当時の言葉で現代語訳された『源氏(物語)』もありますし、明治以降は与謝野晶子の『源氏(物語)』をはじめとする、いくつもの『源氏(物語)』(があります)。谷崎潤一郎もそうです。そこのところは苦労すると思うのです。正確に、忠実に、つまり外国語から日本語に翻訳するのと同じように、とにかくひと言も一つも取りこぼしをつくらずに正確に翻訳していくと、臨場感といいますか、実際に原文を読んだときの感情の浮き沈みであるとか、湿度といったものが、私はなかなか捉えることができません。

林 ええ。空気感というか。

キャンベル そうですね。私が初めて(『源氏物語』を)読んだのは、先ほども申し上げたのですが、英訳でした。私が大学に入る前の年、高3のときにエドワード・サイデンステッカーさんの、名訳といわれている英訳が出版され、私が大学1年生のときにちょうどそれがペーパーバックになって、大学生でも買える、わりと廉価版が出ました。それを買って、1年生のときに英語で読んだのが初めてだったのですけれど、私にはそれはすごく良かったのです。

林 はい。

キャンベル それはなぜかというと、足すことも引くこともなく、非常に忠実に、ある意味ストイックに渋く翻訳しているのです。それがスッと入ってくるのです。

 フランスの小説ですとか、イギリスの小説、アメリカの小説、映画、いろいろなものを中学生のときからたくさん読みふけっていた私の文脈からスッと入ってきたのです。

 まさに歌ですね。ある意味すごく散文的な訳ですね、サイデンステッカーさんのものは。それが数年たって日本語を学び始め、少しずつ、原文がこういうものだということで、その隔たりとして11世紀の日本語と現在の日本語があるということが分かり、それをどんどんこすっていって…。

 結局、私は江戸時代を専門としているので、江戸時代の文献が面白くて、ずっとそれを通覧しているのですが、振り返ってみると、今おっしゃるように、おそらく林さんとは違う戦略で、サイデンステッカーさんはがとにかく水漏れをしない、防水効果をした、その『源氏(物語)』の英訳というものを数十年ぶりに、アーサー・ウェイリー以来に試みました。


●イギリスが日本文化を理解する上で重要な役割を果たした『源氏...


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