日本画を知る~その技法と見方
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本画の余白とは、見手が入り込む隙を作ること
日本画を知る~その技法と見方(2)余白のあり方
芸術と文化
川嶋渉(京都市立芸術大学 副学長 美術学部美術科(日本画専攻)教授)
日本画家で京都市立芸術大学美術学部日本画研究室教授・川嶋渉氏が、日本画の世界について語る。川嶋氏は日本画において「余白」というものが非常に重要だと言う。しかし、余白とは単に白い部分、絵が描いていないということではない。では、一体どうすれば見る人の共感、感動を誘う余白を生むことができるのだろうか?(全3話中第2話)
時間:7分36秒
収録日:2017年11月13日
追加日:2018年1月30日
カテゴリー:
≪全文≫

●余白とは、全てを描ききらずに隙を作ること


 私が描く日本画の中で大切にしている言葉のうち、「余白」があります。これは日本画の中でよく使われる言葉で、例えば白い部分であるとか、絵が描かれていない部分というような意味を持つのですが、私は別の解釈を持ち込んでいます。この余白とは、実は絵が描かれている、描かれていないということと関係なく、見手の気持ちが絵の中にすっと吸い込まれていくとか、「これはどうしているのかなぁ」などと、見手が絵の中に一緒に参加していけるような余地があるかどうか、ということだと考えています。

 もしくは、絵の中に「隙」があるかどうかということを、実は私は意識しています。隙のない真実を事細かく写し取ったもの、いわゆる写実的にいくと、どうしても余白の部分が無くなっていきます。情報で埋め尽くされていく、という感じですね。そうすると、見手は、絵かきが見たものを「そうだったんだ」というように強制的に見せられるということになり、それに共感できる人もいますが、なかなか共感できないということも、実は起こるのです。私の考えている余白とは、絵の中に隙を作るということです。隙を作り、その中に人の気持ちがすっと寄り添えるような余白を作ることを意識しています。

 では、どうやって余白を作るのかということですが、「全てを描ききらない」ということを気をつけています。10割我を通せば非常に力強い作品になるということは百も承知ですが、私は大体6割ぐらいを目指しています。あとの4割は見手の皆さんの経験と私の絵の中に描かれているものが、頭の中ですっとつながることで、6割の表現が8割、9割、もしくは10割に到達していく。その行為が、日本画で今まで大切にしてきた余白のあり方ではないかと思っています。


●タイトルも重要な要素


 この作品を見てください。真ん中に墨で何やらぼんやりとした形がどんとある。真ん中にすっと一本の線が引いてある。その線の上に、ちょん、ちょん、ちょんと丸い粒が配置されている。画面にはそれだけしか描かれていません。それ以外のところは白くほったらかしです。一見すると、何か抽象絵画のように思えますが、タイトルにヒントがあります。絵かきが使える言い訳の一つとして、タイトルがあります。絵で説明するということではなく、タイトルでヒントを与えていくということも、私は大切にしてい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
岡倉天心『茶の本』と日本文化(1)岡倉天心の生涯
岡倉天心の『茶の本』…世界に向けた日本伝統文化の発信
大久保喬樹
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(25)クーデターで考える「政治の要点」
台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件
テンミニッツ・アカデミー編集部
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(2)再生可能エネルギーの可能性と経済性
やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(2)50歳からの目標
伊能忠敬の生き方に学ぶ「50歳からの目標」とは?
童門冬二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
核DNAからさぐる日本のルーツ(2)原人・旧人・新人
原人・旧人・新人は長い年月をかけて分岐と混血を重ねた
斎藤成也