●絵画のカテゴリーとは画家とモチーフの距離感の違い
「日本画」は、もともと明治時代に使われるようになった言葉です。それ以前にもたくさんの絵はありましたが、それらは、もちろん(中国)大陸から伝わった画法や技法、もしくは思想の下で展開されてきたもので、日本画は中国とはまた別の展開がなされてきました。
例えば、有名なものとして、「琳派」をご存知でしょうか。自然のモチーフを装飾的に描いたとして非常に有名であり、世界的にも「RIMPA」という言葉が使われるようになっています。この「装飾的に描く」ということですが、中国から伝わったものの中に、「山水画」または「花鳥画」があります。
山水画は、いわゆる山の景色を描いたものとお思いでしょうし、花鳥画は花や鳥といった自然のものを描くというイメージでしょう。もちろん、そういったものが描かれているものを山水画、花鳥画といったカテゴリーに分けてきたのですが、実は山水画家が花鳥を描かないのかと言うと、そういうわけではありません。では、花鳥画家も山をモチーフにしないのかと言えば、実はそうではありません。もう少し深く掘り下げていくと、山水画ではモチーフと画家との距離が非常に遠いのです。
●モチーフとの距離が遠い山水画、近い花鳥画
そのモチーフとの距離だけに視点を当ててみましょう。山を、非常にエネルギーのあるもの、もしくは神様のようなものとして崇めた時代は、山を描くことには非常に意味がありました。単に山が大好きだと思って描いてきたわけではないのです。その中に非常に神秘的なものを感じた画家は、ある程度の距離を縮めて描かずに非常に遠くの景色として、近寄り難い存在として山を描いてきました。そのようにして生まれたのが山水画です。ですから、山水画ではモチーフと画家との距離が非常に遠い。逆に花鳥画では花や鳥、もしくは小動物、虫といったものを描くので、画家とモチーフの距離が非常に近い。例えば、手に取って愛でる距離なのですね。
●花鳥画の目線で風景を描いてみる
私は普段、花も描きます。当然、風景も描きますし、水辺の景色といったものも描きます。花鳥画の目線で、例えば水辺の景色、風景を描いたらどのようになるだろうか、というようなこともします。山水画家が花の作品を描くのですが、これは非常に遠いモチーフとして描くということよりも何か一つの塊...