刀匠・松田次泰に聞く―至高の美と強さ
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
刀鍛冶の仕事に欠かせない「和鉄」の魅力…洋鉄との違い
刀匠・松田次泰に聞く―至高の美と強さ(1)和鉄とたたら
良い刀をつくるためには、徹底して素材にこだわる必要がある。刀匠・松田次泰氏は刀工の道に入って40年たつというが、「刀鍛冶の仕事の半分は鉄づくりにかかっている」とも語っている。原料となる「和鉄」とは、どんなものか。洋鉄との違いはどこにあるのかをうかがってみた。(全2話中第1話)
時間:7分23秒
収録日:2017年3月22日
追加日:2017年12月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●刀の材料になる「卸鉄」は、どこからくるのか


質問 和鉄と洋鉄はどう違うのでしょうか。また、和鉄を文化として振興する運動にも携わっていらっしゃるとお聞きしましたが、それについてもお話しください。

松田 今の刀の材料は、明治までにできた鉄であれば、どんな鉄でもいいのです。例えば昔の家には門があり、門扉がありました。それを留めるのにたくさんの鋲が使われています。また、古いノコギリや焼身(ヤキミ)になったような古い刀も材料になります。昔、骨董屋の店頭によく出ていた「種子島」の銃身は最適でした。今では高価になってしまったので、材料にはなりません。

 それらの鉄を小割りにしたものを、卸鉄(オロシガネ)と呼びます。鉄は再生の利く材料なのです。ただし、明治以降、溶鉱炉でつくられた鉄は再生がきかず、和鉄にはならないので、古いものを選びます。

 私が弟子の頃、姫路城の解体修理がありましたので、その現場から出た和釘をつぶして卸鉄にしました。現在では、解体修理そのものが新しい時代に行われたものですから、材料としてあてにならなくなってきました。


●玉鋼を求めて「日刀保たたら」の復活


松田 材料の玉鋼(タマハガネ)がどうしても欲しい刀鍛冶は、自分でつくれないだろうかと、個人的に自家製鋼を行ったりもしますが、これにはとにかくお金がかかります。

 そこで、私の師匠で人間国宝だった宮入行平先生が文化庁に働きかけ、島根県の「たたら」を再現することになりました。戦前に陸軍が「靖国たたら」として軍刀の材料をつくった施設があったので、その跡地を昭和52(1977)年から「日刀保(にっとうほ)たたら」として復活させたのです。

 私たちは、そこでできた玉鋼を買って刀をつくっています。(火入れ以来)35年以上、大がかりな修理はなされず、細かい修理をしながら稼働している施設です。

 刀鍛冶の使う材料は、炭素量が結構高く良質な部分ですが、「たたら」で一度製鉄を行うと2.5トンの鉄塊ができてしまいます。これを割って、いい部分だけを刀鍛冶が使いますと、残りの炭素量の低い和鉄が在庫の山になってしまいます。

 これをなんとか使えないだろうか、という問題が今、持ち上がっています。先ほど姫路城の話をしましたが、古い建造物を修理・復元するときに和鉄製の釘や鋲を使うようにしてもらうと、和鉄の需要は増えるのではな...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
百人一首の和歌(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
渡部泰明
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
中世ヨーロッパの基礎的な学問「7自由学科」の一つが音楽
樋口隆一
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望

人気の講義ランキングTOP10
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
インフレの行方…歴史から将来を予測する(2)明治以降の物価推移とインフレ率
戦後日本のハイパーインフレの真実…その時、何が起きたのか
養田功一郎
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(1)人を真に活かす人事評価とは
ソニー流の「人材論」「新規ビジネス論」を具体的に語ろう
水野道訓
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
いま夏目漱石の前期三部作を読む(9)反知性主義の時代を生き抜くために
なぜ『門』なのか?反知性主義の時代を生き抜くヒント
與那覇潤
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(7)AI時代の人文学のあり方
高浜虚子の小説『丸の内』に学ぶAI時代に大事なリアリズム
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(8)目標に向かう力
なぜ毎日練習したくなるのか?大谷翔平の目標に向かう力
桑原晃弥
印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(8)モネとルノワールと印象派の出発点
セーヌ川ラ・グルヌイエールにみるモネとルノワールの違い
安井裕雄
「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯(8)大首絵の成功と蔦重の最期
謎の絵師・東洲斎写楽を「役者絵」で起用した蔦重の思惑
堀口茉純
こどもと学ぶ戦争と平和(2)「本当の平和」とは何か
「平和」には2つある…今の日本は本当に平和なのか?
小原雅博