刀匠・松田次泰に聞く―日本刀のつくり方
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なぜ刀づくりには砂鉄と炭が必要なのか
刀匠・松田次泰に聞く―日本刀のつくり方(3)酸化・還元
折り返し鍛錬では、玉鋼を「沸かす」ために、火花の状態を見る。透明な青紫色から朱色に変わり、黄色みを帯びて火花を放つのが鋼の溶ける温度に達したしるしだ。「鉄の華」「沸き華」とも呼ばれる火花を、刀匠・松田次泰氏はできるだけ短時間に抑えるよう工夫をしている。(全7話中第3話)
時間:10分28秒
収録日:2017年3月22日
追加日:2018年1月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●東工大実験で分かった「1300度」ライン


質問 今はあまり火花が出ていませんが、「折り返し鍛錬」の工程ではもう少し温度は上がるのですか。

松田 「折り返し鍛錬」では温度が上がって、火花が相当出てきます。ただ、この火花はわらなどが燃えて出るものなので、温度はそれほど高くありません。普通の刀鍛冶より20~30度低いことが、東京工業大学の実験で分かりました。

 実験では火床(ホド)の中にセンサーを入れ、鋼を出したときの酸素分圧と温度を測定しました。叩いてしまうとセンサーが壊れるので、3回折り返し、5回折り返し、7回折り返しの時点でサンプルをつくるようにして、どのぐらいの温度で折り返しを行っているのかを調べました。

 同じことを他の現代刀匠にも頼んでやってもらったところ、大体1300度が境になります。彼らは1300度よりかなり高い線で3回折り返し、5回折り返し、7回折り返すという結果が出ました。うちの場合は1300度より20~30度低い数字が出ています。

 大学の先生は「大体同じですね」と言いますが、私にすれば同じではなく、相当低いという実感を得られました。今回のように撮影に来られたときは、少しだけ温度を高めにして火花を上げるようにします。それでも火花は少ない方でしょう。


●「酸化・還元」の「還元」を用いる焼き物と刀


松田 これで、先端の方は大体2.5キロぐらいになりました。それを二つ付けると5キロほどで1本になります。この火床の大きさから言うと、2.2~2.3キロぐらいの段階で「下鍛え」を始めます。それ以上大きくなると、仕事がしにくくなるのです。また、鍛えに入ると炭がたくさん必要になりますが、鉄の量に応じて炭の量も増えていきます。

 火を使うと、酸化・還元反応が起こります。火床は絶えず還元状態にしておきます。なるべく鉄を脱炭させないよう、炭を小さくして、こんもりこもらせるわけです。そうすると一酸化炭素が出てきます。それが還元状態です。

 焼き物などでは、色を出すのに酸化と還元を使い分けています。今は釉薬を使うのが主流で、その極致が中国の青磁ですが、備前焼や信楽焼など釉薬を使わない焼き物の産地では酸化と還元を使い分けてきました。

 焼き物の場合は、どうやって還元状態をつくるかということが非常に大事にされます。還元状態は非常に弱く、火の勢いもないからです。それを「強還元」という状態、...

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