刀匠・松田次泰に聞く―日本刀のつくり方
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
刀鍛冶と野鍛冶の仕事の違い
刀匠・松田次泰に聞く―日本刀のつくり方(5)羽口の秘密
芸術と文化
松田次泰(刀匠)
「沸かし」を待つ刀匠・松田次泰氏に、さらに素朴な疑問をぶつけてみた。鍛える鋼を載せているのは鉄製の道具なのに、なぜ1300度に達する火床で溶けてしまわないのか。秘密はフイゴの「羽口」にあるらしい。(全7話中第5話)
時間:3分32秒
収録日:2017年3月22日
追加日:2018年1月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●鋼を載せた「てこ棒」が溶けてしまわない理由


質問 鉄を溶かすのに、鉄製の道具を使われているのは不思議な感じがします。例えば今、柄のあたりに水をかけているのは、鋼を載せる「てこ棒」の温度を下げるためですか。

松田 これは、てこ棒の位置を決める印の鉄片が熱くならないようにしているだけです。このてこ棒は普通の洋鉄製の丸棒を買ってきて、途中まで四角くして、真ん中あたりから和鉄をくっつけてつくったものです。和鉄だけでつくったものでは柔らかすぎて、仕事にならないのです。

 鉄を溶かす道具が鉄で大丈夫かとお尋ねですが、火床の中で鉄が溶けるほど熱くなるのは、ごく一部だけです。フイゴから風が送られてきて吹き出す先端部分を「羽口」と呼びます。その周りだけが局所的に熱くなって、1300度に達します。しかし、他の部分は鉄の溶ける温度までは達していません。


●刀鍛冶と野鍛冶の仕事の違い


質問 洋鉄が入る以前の刀鍛冶と野鍛冶の仕事の違いについて、教えていただけますか。

松田 仕事ではかなり違いがあります。刀の場合は、刀身の全部に焼きが入ります。鑿(ノミ)や鉋(カンナ)の場合、刃物として使う刃金部分はごくわずかですから、そこにだけ和鉄を使います。後は日本鉄という炭素の少ないもので、今も工場でつくっていますが、炭素量0.2パーセント~0.3パーセントのものを「地金」にしています。普通の洋鉄では硬くて溶けませんが、刃の金は柔らかいので溶かしてくっつけてつくります。この刃の金は鍛錬もするので、見た目は一緒です。

 農機具の場合も、刃先だけ炭素量が高いといい道具になります。ですから、刃先にだけ炭素量4.0パーセントぐらいですぐに溶ける銑鉄を載せて、炭素量を上げたりもしています。それを行うにはフイゴが必要なので、野鍛冶の人も必ずフイゴを使います。


<参考文献>
『名刀に挑む 日本刀を知れば日本の美がわかる』(松田次泰著、PHP新書)

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
岡倉天心『茶の本』と日本文化(1)岡倉天心の生涯
岡倉天心の『茶の本』…世界に向けた日本伝統文化の発信
大久保喬樹
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆

人気の講義ランキングTOP10
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎