刀匠・松田次泰に聞く―日本刀のつくり方
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「扱いにくさ」を利用することで良質な日本刀ができる
刀匠・松田次泰に聞く―日本刀のつくり方(2)和鉄の科学
「一番大事なのは、鉄の持っている炭素量をできるだけ減らさない」ことだと、刀匠・松田次泰氏は言う。そこで、刀の炭素量を0.7パーセントに保つようにする。刀身が明るく冴えわたるこの炭素量は、しかし焼き入れを大変困難にする。その「扱いにくさ」にこそ質を目指す価値はあるのではないか。(全7話中第2話)
時間:9分44秒
収録日:2017年3月22日
追加日:2018年1月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●準備段階に時間をかけるのは、炭素量を下げないため


質問 火床(ホド)の長さは、決まっているのですか。

松田 はい。だいたい決まっています。ここで刀を出し入れしながら焼き入れをするので、かなり長めです。大きめにつくっています。炭はかなり奥まで入れます。

 もう少し伸ばすと、短冊3枚分が取れるようになります。そこから「折り返し鍛錬」が始まります。だいたいテレビなどの撮影はそこから始まることが多いのです。

 最も多いのは、玉鋼を一度薄く圧(ヘ)して、焼きを入れて割り、その割れ口の具合を見て、積んで始めていくという流れです。ただ、そのように小割りにした鋼を積んで、「沸かし」の温度をかけると、脱炭する割合が高いのです。

 今、行っている作業でも、ものが小さいため、なるべく火をかけすぎないよう、やっとくっつくぐらいの温度に加減しているので、時間がかかっています。一番大事なのは鉄の持っている炭素量をできるだけ下げないようにするということです。

 玉鋼の炭素量はこれでだいたい1.6パーセントぐらいで、普通の玉鋼が1.4パーセントから1.5パーセントですから、少し高めというところです。玉鋼のいいところだけ集めているので、普通より0.1パーセントぐらいは高めになります。

 これを10回折り返していくと、刀一本あたりの炭素量は0.7パーセントぐらいで、やや高めになります。こうなると、焼き割れしないように焼き入れをするのが難しい。普通は焼き割れを防ぐため、だいたい玉鋼1.4パーセントぐらいから始めて、焼き入れの時は0.6パーセントぐらいにします。ただ、そのぐらいにすると、刀の持つ波紋の明るさが少し落ちてしまいます。そこを明るくさせたいのです。


●玉鋼の持つ「仕事のしにくさ」が質のいい日本刀を支える


松田 テレビの番組などでは、よく「叩くことで不純物を取り除く」という言い方をします。私も始めのうちはそう思っていましたが、考えてみると和鉄には不純物などほとんど入っていません。鉄に含まれる不純物というと硫黄やリンですが、和鉄の含有量は洋鉄とは1桁違います。ほとんど入っていないといっていいのです。ほぼ純粋な炭素でできた炭素鋼なのです。

 炭素鋼は焼き入れ性が悪く、扱いにくい部分があります。そこでもう少し扱いやすくしようと考えたのが現代の刃物鋼である安来鋼です。ただ、問題はその「扱いにくさ」...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
おみくじと和歌の歴史(1)おみくじは詩歌を読む
おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
平野多恵
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫

人気の講義ランキングTOP10
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
宗教で読み解く世界(1)キリスト教の世界
キリスト教とは?…他の一神教との違いは神様と法律の関係
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(2)世界市民と国家連合
「コスモポリタニズム」の理想と「国家連合」というプラン
川出良枝
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純