刀匠・松田次泰に聞く―日本刀のつくり方
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腕のいい職人の仕事はどんな場面を撮っても絵になる
刀匠・松田次泰に聞く―日本刀のつくり方(4)水打ち
芸術と文化
松田次泰(刀匠)
水蒸気爆発で金肌(酸化鉄)を吹き飛ばす「水打ち」を、刀匠・松田次泰氏は極めて無造作に行う。従来は酸化鉄を完全に除去することが重要だと教えられてきたが、松田氏は自身の経験から「それほど刀の出来を左右するものではない」という判断を得たからだ。全てが手作業ゆえに軽重のつけにくい刀づくりの工程も、火と鉄の科学である。(全7話中第4話)
時間:10分17秒
収録日:2017年3月22日
追加日:2018年1月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●水蒸気爆発で金肌を吹き飛ばす「水打ち」


質問 今、わら灰を半分ぐらい叩かれましたが、何のためですか?

松田 「水打ち」といって、水蒸気が爆発する力で金肌を取っているのです。私たちの年代の現代刀匠は普通、こんな雑な仕事はしないでしょう。もっと一から十まで丁寧です。真っ平らにしてから水打ちをしますし、酸化膜は絶対に残さないようにします。

 私も親方から「金肌は絶対に残すな」と言われてきましたが、今では結構残っています。出来とはあまり関係ないことが分かってきたからです。弟子時代から今まで、とても無駄な仕事をしてきたものだと思いますし、今の私の仕事は、その頃と比べると、とても雑に見えると思います。

 面白いことに、職人の仕事は、本当に上手な人の動きだと、どんな場面を撮っても絵になります。仕事の姿が格好悪いのは、下手な証拠です。それから、研ぎ師などは特にそうですが、上手な人の仕事は「眠くなる」ということがあります。リズムが一定していて変化がないからでしょう。砥石の音がコットンコットンと、見ていると眠くなってきます。やっている本人でさえ眠くなります。

 私たちの修行時代は、「職人の仕事は、途中の段階もきれいでなければならぬ」と習いました。だから、こういう雑な仕事をすると、非常に叱られます。と言って、私は雑にやっているわけではなく、意味がないからあまり手間をかけていないのです。

 やり方の分からないことに取り組んでいると、途中で「ああじゃないか」「こうじゃないか」という迷いがとても多くなります。だからうまくできないのですが、一方で「仕事はきれいにしないといけない」ということになっているのです。


●理屈が分かれば、仕事のやり方が変わる


松田 理屈が分かってくれば、手を抜くということではなく、影響の大小で大事な部分とそうでないところが切り分けられます。もちろん全部大事といえば大事ですが、現代刀の仕事と比べると、それほど手間をかけなくていいところと手間をかけるべきところが分かってきます。

 今のように、一つ一つを丁寧に積んでいくという仕事を他では見かけません。私に言わせると、それが大事なはずだけどな、と思います。

 私のやり方をテレビで放映して、他の刀鍛冶は真似するかというと、まずやりません。人の仕事を見て盗むということは、若い人がやるとまず失敗します...

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