刀匠・松田次泰に聞く―日本刀のつくり方
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
研ぎ師はお礼奉公の1年で「繕い」の秘伝を覚える
刀匠・松田次泰に聞く―日本刀のつくり方(7)甲伏せ
言葉にしにくい職人の知恵を「鉄と火の科学」と照合して、現代の日本刀づくりに生かし続ける刀匠・松田次泰氏。しかし、メディアは表面的なことで判断することが多い。工程は皮鉄で心鉄をくるんでいく「甲伏せ」に入っていくが、鍛錬で飛び散る火花はテレビ画面には必須だし、職人が複数でハンマーを叩き合う「向槌」の場面も絵になるからだ。(全7話中第7話)
時間:12分51秒
収録日:2017年3月22日
追加日:2018年1月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●皮鉄の裏表と「柾目」にならない延ばし方


松田 皮鉄はどちらを表に出すか、印を付けておかないと、甲伏せになったときに中に入ってしまって厄介です。鍛錬している最中に、「傷っぽい」方を表にしようとあらかじめ決めておきます。傷っぽかったり、ふくれそうだと思う側を表に出しておくと、後で切り取ってしまうことができます。

 表側に出た不都合は操作できますが、逆に中に入ってしまうと、心鉄とくっ付いて、どうしようもなくなります。刀になったときに心鉄と皮鉄が剥がれて、おたふくのようにボコッと出るのは、そうした場合です。小さなフクレなら途中で取れるので、なるべく傷っぽい箇所が外側に出るように、鍛えの間も甲伏せの準備でも気配りをします。

 「向き」が非常に大事なのです。今は正方形なのであまり目に付きませんが、少し広がっていくと、すぐに分かります。

 鍛えのときに心掛けて操作するのは、「柾(マサ)」にならない延ばし方です。木の柾目は重宝がられますが、刀の場合は違います。「柾鍛え」というのもありますが、ごく限られています。ほとんどは「板目」や「杢目」です。

 鎌倉期までの古刀には流れたところがありません。江戸時代もなるべく延びないように操作していますが、鎬(シノギ)の地だけがどうしても柾になっています。そうすると、いくら内容が古く見えても「これは新刀だな」と露見します。そこが分からないように、新刀では「樋(ヒ)」という溝を彫っています。


●心鉄の役割と甲伏せのさまざまな技法


松田 「甲伏せ」についてですが、一度皮鉄をまくってみて、懐具合がだいたい分かってから、心鉄の量に調整をかけます。心鉄は昨日のうちに鍛えてありますが、普通は約2本分用意します。心鉄が少ないと刀の目方が出なくて困りますので、少し多めに準備します。多い分にはいくらでも調節がききますが、足りないとどうにもなりません。

 心鉄の役割は、刀の重量を調節する意味とともに、「折れ」を防ぐこともよく指摘されています。おそらく新刀になってからはそれもあったかもしれません。

 ただ、鎌倉時代の古刀を裁断してみると、どこが心鉄でどこが皮鉄なのか、境目が分かりません。明らかに心鉄が入るのは、江戸時代に入ってからです。江戸期後半になると、「四方詰」や「本三枚」の技法が出てきます。それぞれ皮鉄と心鉄と棟鉄につくり分け、組み...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明
百人一首の和歌(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
渡部泰明
おみくじと和歌の歴史(1)おみくじは詩歌を読む
おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
平野多恵
日本画を知る~その技法と見方(1)写実・写意・写生
日本画で大切な「写意」「写生」の深い意味とは?
川嶋渉

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治