●古い脳「大脳辺縁系」と新しい脳「新皮質」の進化と思春期
まずは脳みその中で、ものを感じたり考えたりする基盤となるところを見てみましょう。
脳はこういう大きな塊ですが、大ざっぱにいうと先ほど話した「不快」を感じるような情動のところ、何をしたらいいかという「動機づけ」に関与しているところが、脳の奥深い真ん中のところにあり、「大脳辺縁系」と呼ばれている場所(です)。
その外側全体を取り巻いている上の方が「新皮質」というところです。それは、いろいろな事柄をメタに、すなわちそれをただ感知するだけではなく、そういうこと全体を上から見てみるようにメタ認知して、何をするべきかを決定し、行動決定するのが、上の方の新皮質です。進化的には大脳辺縁系が古くからできていて、新皮質は「新」という言葉があるように、進化的には新しく、後から上に乗ってきました。
でも、大脳辺縁系が古いところで情動をもたらすけれど、新皮質で考えて決めるというと、完全に2つの別のものがあって、情動が起こってきても、新皮質のほうでちゃんと考えてピシッと決める、というように考えられるけれど、そうではありません。この2層の間には複雑な相互関係があるので、本当に合理的にピシッと決めるなどということは、なかなかできない。そういう情動・動機づけのところ、心地よいか・そうでないかという雰囲気などを決めるところとは、とても密接に相互に関係しています。
大脳辺縁系の場所は、脳の非常に奥深く、この脳の絵にある真ん中のところです。自分自身の体の状態、例えば疲れている・疲れていない、お腹が空いている・空いていないなどといったことを全部感じ取って、外からのいろいろな感覚情報も察知し、それらを全部まとめて処理する。(そして)今、どういう気持ち(気分)なのか、情動・動機づけに関わって最初に信号を発信するのが、この辺縁系です。
怒りや恐怖、欲しい・欲しくない、逃げたい、セックスしたいというような怒り・恐怖・欲求、生存と繁殖に関わる動機づけをしているところです。
(その)上にかぶさったシワシワがあるのが新皮質です。特に、おでこの前のほう、前頭葉の前のほうに「前頭連合野(前頭前野)」というところがあります...