ヒトはなぜ罪を犯すのか
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ヒトはなぜ罪を犯すのか(2)脳の構造と働き
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
脳の構造と情動・認知の進化はつながっている。脳内にある進化的に古い「大脳辺縁系」は何をしたらいいかという「動機づけ」に関与しているところで、そことその上にある「新皮質」の中の前頭連合野(前頭前野)が密接に関連し、葛藤として伝えられる情動がメタ認知によって処理される。とはいえ、ヒトの意思決定は必ずしも合理的ではない。報酬系の活性化が最終的な判断に大きな影響を与え、その基準を変動させる。今回は脳の構造とそれぞれの働きについて解説する。(全3話中第2話)
時間:14分00秒
収録日:2023年12月11日
追加日:2024年3月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●古い脳「大脳辺縁系」と新しい脳「新皮質」の進化と思春期


 まずは脳みその中で、ものを感じたり考えたりする基盤となるところを見てみましょう。

 脳はこういう大きな塊ですが、大ざっぱにいうと先ほど話した「不快」を感じるような情動のところ、何をしたらいいかという「動機づけ」に関与しているところが、脳の奥深い真ん中のところにあり、「大脳辺縁系」と呼ばれている場所(です)。

 その外側全体を取り巻いている上の方が「新皮質」というところです。それは、いろいろな事柄をメタに、すなわちそれをただ感知するだけではなく、そういうこと全体を上から見てみるようにメタ認知して、何をするべきかを決定し、行動決定するのが、上の方の新皮質です。進化的には大脳辺縁系が古くからできていて、新皮質は「新」という言葉があるように、進化的には新しく、後から上に乗ってきました。

 でも、大脳辺縁系が古いところで情動をもたらすけれど、新皮質で考えて決めるというと、完全に2つの別のものがあって、情動が起こってきても、新皮質のほうでちゃんと考えてピシッと決める、というように考えられるけれど、そうではありません。この2層の間には複雑な相互関係があるので、本当に合理的にピシッと決めるなどということは、なかなかできない。そういう情動・動機づけのところ、心地よいか・そうでないかという雰囲気などを決めるところとは、とても密接に相互に関係しています。

 大脳辺縁系の場所は、脳の非常に奥深く、この脳の絵にある真ん中のところです。自分自身の体の状態、例えば疲れている・疲れていない、お腹が空いている・空いていないなどといったことを全部感じ取って、外からのいろいろな感覚情報も察知し、それらを全部まとめて処理する。(そして)今、どういう気持ち(気分)なのか、情動・動機づけに関わって最初に信号を発信するのが、この辺縁系です。

 怒りや恐怖、欲しい・欲しくない、逃げたい、セックスしたいというような怒り・恐怖・欲求、生存と繁殖に関わる動機づけをしているところです。

 (その)上にかぶさったシワシワがあるのが新皮質です。特に、おでこの前のほう、前頭葉の前のほうに「前頭連合野(前頭前野)」というところがあります...

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