●実はコテコテの純日本企業
このシリーズの企業紹介の最後に、三井物産株式会社を取り上げてみたいと思います。
三井物産というと、皆さんは非常にグローバルな企業というイメージをお持ちかもしれません。ですが、私の知る三井物産は、本当にコテコテの日本企業です。例えば、聞いてびっくりするのは、毎月1回か数カ月に1回か忘れましたけれど、業後に食堂で誰でも参加していい飲み会をやっているというのです。いる役員は基本的に皆出席して、社長も出れば、会長も出ます。そこでは、フライドチキンなどをつまみにビールを飲みながら、とにかくワイワイガヤガヤ一緒に語り合い、そこに結構社員が集まってきて、楽しく飲んでいるという、今どき珍しいことをやっているのが、三井物産です。
また、事業部制を導入しています。今でも一応事業部制になっていますけれども、事業部制というのは、どうも全社的な一体感としてよくないということで、必ずしも欧米流のアカウンタビリティが徹底した経営ではなく、むしろ「やりたいならやってみろ」というぐらいの感じで、いろいろな事業展開をやっているという会社です。
●本質は投資会社、バークシャー・ハサウェイに近い
莫大な資源からの利益があるからこそできる余裕の経営なのかもしれませんが、そういった余裕が、例えば最近も、投資したマレーシアのヘルスケアの企業が上場して、数百億単位の利益(マレーシアのIHH:2015年3月末時点の投資含み益は2000億円超に上る)を上げていましたが、そのような投資の好循環につながっている会社だと思います。
そういう意味で、三井物産は、総合商社ということで、ベンチマークするモデルがなかなかグローバルにはないと言われていますが、私は、ひょっとしたら、ウォーレン・バフェットの投資会社であるバークシャー・ハサウェイに近いのではないかなと見ています。決して資源のメジャーではない、そういう会社です。
●課題は本社コストも、54歳の新社長を抜擢できる健全さに期待
ただ、この会社の課題も、やはり日本の会社であるがゆえに、共通的な本社コストです。日本企業ですから、やはり余剰な人員を抱えていくのです。そうすると、抱える場所が結局本社しかなくなってきますので、どうしても本社コストが高くなります。これが、この会社をグローバルで見たときに、やはり競合の中でハンデキャップを負っている部分になります。投資会社として見れば、特にそうです。そういうようなところがあると思います。
ちなみに、このコテコテの日本企業が、つい最近、新しい社長を発表しました。その社長は、安永竜夫さんという方で、54歳、東京大学の工学部を出た純粋な三井物産マンです。漏れ聞くところによると、仕事には非常に厳しいが、親分肌で、自らも勉強し、厳しく仕事に臨む。上からも、同期からも、下からも、「この人なら」と見込まれている方だそうです。
後継者としてそういう方が育ってくる、またそういう方を54歳というタイミングで新社長に任命できるということは、ある意味で健全な日本のグローバル企業と言えるでしょう。三井物産は、自信を持ってグローバルに打って出て、頑張って活躍をしている日本企業の代表と言えるのではないかと思います。ただ、今は過去に投資した資源でもうかっているからいいですけれど、このラッキーを生かし、もっと日本の好景気にも沿った形でのビジネスの展開をお願いしていきたいと思っています。