脱デフレのポイント
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
デフレ脱却のカギの一つは雇用と賃金
脱デフレのポイント(1)労働市場~賃金と産業調整~
政治と経済
伊藤元重(東京大学名誉教授)
今後、生産性、付加価値を上げた企業だけが生き残る時代がやって来ると、東京大学大学院経済学研究科教授・伊藤元重氏は語る。それはなぜか。脱デフレをテーマに、伊藤氏が日本経済の現在を大胆に分析するシリーズ「脱デフレのポイント」第1回。
時間:11分41秒
収録日:2015年12月2日
追加日:2015年12月28日
≪全文≫

●株価、失業率、税収、企業収益などは改善


 「アベノミクスステージ2」ということで、安倍内閣の下、どのような改革が行われていくかが注目されています。TPPを結んだことでどのようにグローバル戦略を進めていくか、コーポレートガバナンス改革で日本企業の積極投資をどのように生み出ていくか、あるいはエネルギー改革、電力システム改革で日本のエネルギー構造をどう変えていくか、社会保障改革で財政健全化と経済発展をどのように結び付けていくか、こういったことが大事になるでしょう。これらについては、いずれまたこの場でお話しします。

 ただ、忘れてはいけないのは、こうした改革や長期的戦略と並行して、安倍内閣にとって極めて重要なのが「デフレからの脱却」だということです。この脱デフレが、現在どういった状況にあるのか、あるいはアベノミクスステージ2でどのような展開予想をわれわれは頭に入れておかなければならないのかを、少しお話ししたいと思います。

 ご案内にように、黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任し、大胆な金融緩和を行って、マーケットは強く反応しました。野田政権が国会解散を決める前、政権交代が少し見えてきた頃と現在を比べると、日経平均株価はおよそ8800円から2万円程度まで、140~150パーセントほど上昇しています。失業率は4.2パーセントだったのが、現在は3.1パーセントまで下がってきました。何より注目すべきなのは、有効求人倍率が過去23年で一番高くなっていることです。労働市場が活気を呈している、悪く言えば逼迫(ひっぱく)しています。

 税収は、最近の推計結果が新聞などにも報道されていましたが、2012年の野田内閣の頃は42~43兆円だったものが、どうやら56兆円くらいまで上がりそうです。約25パーセント増える計算になります。日本企業の収益そのものは、3年で約30~35パーセント、あるいはそれ以上伸びているそうです。アベノミクスステージ1の政策が、明らかに経済に良い影響を及ぼしています。

 問題は、さまざまな数字がこれだけ伸びているにもかかわらず、肝心の経済そのもの、GDPを構成する消費、設備投資、生産活動には必ずしも強い回復感が見られないことです。これが、日本経済全体が上向いた感じがしない原因です。この辺りが今後、どうなっていくかを見ることが、アベノミクスステージ2、あるい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
政治学講座~選挙をどう見るべきか(1)選挙の意味
選挙と政治権力…「選挙に勝つ」とはどういうことか?
曽根泰教
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(2)イノベーションとプロセスの質
「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める
遠山亮子