「働き方改革」の課題と可能性―労働力不足を逆手に
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
安倍首相の「労働市場改革」が政治的に難しい理由
「働き方改革」の課題と可能性―労働力不足を逆手に
伊藤元重(東京大学名誉教授)
政府が力を入れている「働き方改革」の中で、解雇規制緩和やホワイトカラー・エグゼンプションなど、いろいろな改革案が出てきているが、現実には政治的に難しい面がある。しかし、経済の構造改革を行う上で、労働市場と雇用の調整は最重要課題だ。では何をポイントにすればいいのか。東京大学名誉教授で学習院大学国際社会科学部教授・伊藤元重氏が論じる。
時間:8分02秒
収録日:2017年1月26日
追加日:2017年3月16日
≪全文≫

●安倍首相の掲げる「労働市場改革」が政治的に難しい理由


 今、安倍内閣の下で「働き方改革」がさまざまな形で行われています。その中から、今日は一つの視点を提供したいと思っています。

 日本に限らず、主要国のどこでも、経済の構造改革をするときにはどうしても労働市場改革が中心になるだろうと思います。産業の再編を促し、労働の生産性を上げていくには、やはり雇用調整が非常に重要になるからです。例えば、最近のドイツ経済は好調ぶりが目立っていますが、その大きな理由の一つは、10年以上前にシュレーダー首相の下で行われた「シュレーダー改革」という労働市場改革が功を奏したことです。

 安倍内閣でも、発足後最初に労働市場改革が、非常に重要なアジェンダとして挙げられました。そして、ご案内のように、例えば、解雇規制を緩和するとか、ホワイトカラー・エグゼンプションを行うなど、いろいろな改革案が出てきています。

 私は、こういう改革がもしできるのであればぜひやってほしいと思うのですが、現実には政治的になかなか難しい面があります。例えば、解雇規制を緩和すれば、企業は労働者を解雇しやすくなります。それが、結果的にはより積極的に雇用することにもつながるし、人々の流動化を進めます。このようにいえば非常に好ましく聞こえますが、政治的には「解雇規制緩和」といった途端に、「それは首切り法案だ」と取り沙汰されてしまいます。つまり、労働市場改革を正面から取り上げようとすると、非常に厳しい政治的なプロセスを通らざるを得ず、それによる利害をいろいろな人が受けるということで、労働市場改革は現実的にはなかなか難しいのです。


●縮小する労働市場を労働改革への圧力に使う


 ただ、ここにきて少し流れが変わってきています。それはなぜかというと、安倍内閣の下でマクロ政策効果が上がり、同時に人口減少の中で労働力が少し減ってきていることもあって、労働市場が非常に締まってきているからです。そうした状況下で、派遣、パート、期間労働者、中小企業の労働者など、市場にセンシティブなところを中心に、賃金が上がり始めています。

 実際、労使間でベアを交渉したり、長期的な雇用関係を交渉するような大企業で働いている人は、全体の2~3割もいないわけで、半分以上の労働者は、労働市場の流れにかなり敏感に反応しながら動いています。だから、こ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
「発想力」の技法を学ぶ(1)発見と探究(前編)
“なぜ”を繰り返せ!『発想力の全技法』に学ぶ原因探究法
三谷宏治
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
生き続ける松下幸之助の経営観(1)今も生きている幸之助
松下幸之助の考え方には今と昔を貫くものがある
江口克彦
重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(1)時代に請われ、時代に応えた佐藤一斎
リーダーの心得…幕末の偉人たちを育てた佐藤一斎に学べ!
田口佳史
ハラスメント防止に向けた風土づくり(1)ハラスメントの概要
増え続けるハラスメント…その背景としての職場の特徴
青島未佳
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建

人気の講義ランキングTOP10
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(2)戦略リーダーシップの8次元分析
総合評価は?トランプ大統領の戦略リーダーシップ徹底分析
東秀敏
ユダヤ神話の基本を知る
ユダヤ教の神話…天地創造、モーセの十戒、死後の世界
鎌田東二
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【10minで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(1)米を食べる日本人と『分裂病と人類』
日本人の生きづらさの特徴は?~中井久夫著『分裂病と人類』
與那覇潤
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
民主主義の本質(3)宗教と教会と民主主義
宗教と民主主義…カトリック、正教会、イスラム教の違いは
橋爪大三郎