『孫子』を読む:九変篇
この講義シリーズの第1話は
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
全滅させるのは愚の骨頂…ライバルを残す戦略と2つの意味
『孫子』を読む:九変篇(2)臨機応変に対処するために
田口佳史(東洋思想研究家)
臨機応変に理に精通すること――リーダーに求められることとして、孫子は「故に、將、九変の地利に通ずれば」といい、九変の地、つまりいろいろな土地の状況によって柔軟に対応していくことの重要性を説いている。その中にはあえて選択しないという方法、ライバルを全滅させないこと、戦闘を回避させる必要性も含まれる。今回の講義ではその戦略について学んでいく。(全3話中第2話)
時間:8分30秒
収録日:2020年7月7日
追加日:2024年7月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●軍も撃たざる所有り――全滅させるのは愚の骨頂


 それでは次です。「塗(みち)も由らざる所有り、軍も撃たざる所有り、城も攻めざる所有り、地も争はざる所有り、君命も受けざる所有り」といっています。ここではセオリーでも、どのような状況になっても戦えというのが軍隊のように思っているけれど、それは危険な思想だといっているのです。

 まず「塗も由らざる所有り」ですが、要するに道がいろいろなところに通じているからといって、どの道も全部通ればいいというものではなく、この道は行ってはいけないところもあるということです。これは何かというと、ビジネスの点でいえば、道とはビジネスの方法の意味ですから、そのような方法は取らないという選択もあるということです。

 何でもかんでも勝とうと思ってやればいいというものではない。それで勝ったとしても弊害が残る勝ち方になるから、その方法はやめたほうがいいということです。そういうビジネスの方法の選択があるのです。これも道の選択です。

 それから「軍も撃たざる所有り」で、軍などはどんどん撃てばいいというものではないという意味です。ただ、そこには2つの意味があり、1つはライバルは残しておいたほうがいいという戦略もある。ビジネスなどはまさにそうで、競合がなくなった瞬間に自社が衰えるという会社はたくさんある。競合がいるからこそ頑張れる、社員に奮起を促せるというところもあるのです。そういう意味で、全部撃ってしまって全滅させてしまうは愚の骨頂です。

 それからもう1つ、勝ったとしても、全部灰にして勝ってしまったら、要するに、戦後の復興などはものすごく金がかかるわけです。ですから、(過度に)撃たないということが基本なのです。


●城も攻めざる所有り――入ってはいけないマーケットもある


 そして「城も攻めざる所有り」ですが、城というのは大体何かというと、攻めにくくしてあるところなのです。城が攻めやすいようでは城の用をなさないわけで、城というのは攻めにくいように造ってあるわけですから、そのようなところを故意に攻めるなどはとてもいけないことであり、城などはめったに攻めてはいけないのです。ビジネスでいえば、入ってはいけないというマーケットもあるということです。

 それから、「地も争はざる所有り」は、何でも争えばいいという...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
法華経はSFだ!…心を元気にしてくれる法華経入門
鎌田東二
『孫子』を読む :計篇(1)「戦わずして勝つ」の意味
「戦わずして勝つ」ことを唱える『孫子』が注目される理由
田口佳史
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
自制心の重要性…人間は1日4時間も何かを「欲求」している
森口佑介

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(38)アメリカ中間選挙と民主主義
【10min解説】第2期のトランプ大統領と中間選挙を考える
テンミニッツ・アカデミー編集部
「良き対話」とは?――哲学から考える(1)対話とは何か――会話・説教との違い
「良き対話」のヒントを哲学から考える…「対話」の大前提とは、そして「会話」「説教」「場回し」とは何が違うのか?
納富信留
伊福部昭で語る日本・西洋・近代(1)チェレプニン賞に輝いた無名の作曲家
映画『ゴジラ』の作曲家・伊福部昭が直面した「日本と東洋と西洋」そして「近代の超克」
片山杜秀
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(3)ヴァイキング招致説とキエフ・ルーシ
ロシアの起源はヴァイキング?…キエフ・ルーシの興亡と、ロシアとウクライナの決定的な「歴史的溝」
上月豊久
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(1)老年病科と高齢者の疾患・病態の特徴
頻尿、低栄養、転倒、誤嚥、フレイル…増える老年症候群と高齢者の疾患・病態の特徴
小川純人
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(3)「覚り」とは?「空」とは?
「覚り」「因果」「空」とはどういうものか…仏教の本質と変遷
橋爪大三郎