『孫子』を読む:九変篇
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全滅させるのは愚の骨頂…ライバルを残す戦略と2つの意味
『孫子』を読む:九変篇(2)臨機応変に対処するために
哲学と生き方
田口佳史(東洋思想研究家)
臨機応変に理に精通すること――リーダーに求められることとして、孫子は「故に、將、九変の地利に通ずれば」といい、九変の地、つまりいろいろな土地の状況によって柔軟に対応していくことの重要性を説いている。その中にはあえて選択しないという方法、ライバルを全滅させないこと、戦闘を回避させる必要性も含まれる。今回の講義ではその戦略について学んでいく。(全3話中第2話)
時間:8分30秒
収録日:2020年7月7日
追加日:2024年7月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●軍も撃たざる所有り――全滅させるのは愚の骨頂


 それでは次です。「塗(みち)も由らざる所有り、軍も撃たざる所有り、城も攻めざる所有り、地も争はざる所有り、君命も受けざる所有り」といっています。ここではセオリーでも、どのような状況になっても戦えというのが軍隊のように思っているけれど、それは危険な思想だといっているのです。

 まず「塗も由らざる所有り」ですが、要するに道がいろいろなところに通じているからといって、どの道も全部通ればいいというものではなく、この道は行ってはいけないところもあるということです。これは何かというと、ビジネスの点でいえば、道とはビジネスの方法の意味ですから、そのような方法は取らないという選択もあるということです。

 何でもかんでも勝とうと思ってやればいいというものではない。それで勝ったとしても弊害が残る勝ち方になるから、その方法はやめたほうがいいということです。そういうビジネスの方法の選択があるのです。これも道の選択です。

 それから「軍も撃たざる所有り」で、軍などはどんどん撃てばいいというものではないという意味です。ただ、そこには2つの意味があり、1つはライバルは残しておいたほうがいいという戦略もある。ビジネスなどはまさにそうで、競合がなくなった瞬間に自社が衰えるという会社はたくさんある。競合がいるからこそ頑張れる、社員に奮起を促せるというところもあるのです。そういう意味で、全部撃ってしまって全滅させてしまうは愚の骨頂です。

 それからもう1つ、勝ったとしても、全部灰にして勝ってしまったら、要するに、戦後の復興などはものすごく金がかかるわけです。ですから、(過度に)撃たないということが基本なのです。


●城も攻めざる所有り――入ってはいけないマーケットもある


 そして「城も攻めざる所有り」ですが、城というのは大体何かというと、攻めにくくしてあるところなのです。城が攻めやすいようでは城の用をなさないわけで、城というのは攻めにくいように造ってあるわけですから、そのようなところを故意に攻めるなどはとてもいけないことであり、城などはめったに攻めてはいけないのです。ビジネスでいえば、入ってはいけないというマーケットもあるということです。

 それから、「地も争はざる所有り」は、何でも争えばいいという...

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