『孫子』を読む:虚実篇
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「戦略の極地は無形にある」ということを忘れてはいけない
『孫子』を読む:虚実篇(3)無形の重要性
田口佳史(東洋思想研究家)
昔の戦争でも、現代のビジネス戦略でも、こちらの動きを相手に悟られないことは重要だ。社内の状況や実態がライバル企業に筒抜けだったり、事業戦略が事前に読まれたりするようでは企業の存亡さえも左右する。このようなときこそ、予想もできない戦略で相手を翻弄して成功に結びつけることが大切だが、そのときの最大のポイントは「無形」だと孫子は説いている。(全6話中第3話)
時間:8分44秒
収録日:2020年5月21日
追加日:2022年1月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●相手に悟られない戦略とは何か


 さて、「進みて禦<ふせ>ぐ可からざるは」ですが、進んで敵を防ぐことができない、つまりこちらが進んで攻めていくときに敵が防ぐことができないのは、何といっても「虚を衝けば」で、虚を衝かれたということがあります。例えば、不意に攻めてくるとは思わないところからパッと攻めてくる、虚を衝かれるということがあります。そういう状態を想定しなければいけません。

 さらに「退きて追ふ可からざる」ですが、自分たちが退陣するときに敵が追いつけないのは、「速<すみやか>にして及ぶ可からざればなり」というように、敵が及ばないくらいにさっと引き揚げることが重要だと言っています。これは現代のビジネスの戦略からいっても、敵に多くを悟られないことは一番重要です。そういう意味では、交渉事などのときにも、たぶん相手はこういうふうに言ってくるからこちらはこのようにしようと考えることができないとか、相手がどういう戦略でどのように言ってくるのかよく分からないなど、この「よく分からないという状態」をいつもつくっておくことが重要であるというわけです。

 それは何かというと、無形、無声ということです。つまり、敵の社内がどういう状況かよく分からないということです。そういう点では、会社の実態がよく手に取るように分かるというような状態というのは、こういう戦略論からいえばよろしくないということになります。だから、人間もそういう意味では、可能性ということとか自分の本当の実力などはあまりひけらかして見せつけたりしないほうが、いざというときに「あんな力があるんだ」と相手が驚くことになるということを教えてくれています。

 その次、「故に我戰はんと欲すれば、敵、塁を高くし溝を深くすと雖も、我と戰はざるを得ざるは、其の必ず救ふ所を攻むればなり」です。これは、自分が戦おうと思ったときに、敵がどれほどの防御をしても、「塁を高くし溝を深く」というのは、防御を高くしてさらに溝を深く掘って防御をするということですが、そのようなことをしても、自分と戦わざるを得なくなるようにするにはどうすればいいか、つまり、敵が防御態勢を崩してまで戦うようにするには、「必ず救ふ所を攻むればなり」で、敵が攻められたら困るというところを攻めること...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾
『孫子』を読む :計篇(1)「戦わずして勝つ」の意味
「戦わずして勝つ」ことを唱える『孫子』が注目される理由
田口佳史
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
人生に活かす東洋思想(1)人生の成功とは何か
東洋思想の「徳」や「道」をわかりやすくいうと?
田口佳史
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二

人気の講義ランキングTOP10
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(3)ヴァイキング招致説とキエフ・ルーシ
ロシアの起源はヴァイキング?…キエフ・ルーシの興亡と、ロシアとウクライナの決定的な「歴史的溝」
上月豊久
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(14)ポリスと魂の堕落過程〈下〉僭主の末路
僭主制は欲望の奴隷…過度の自由が過度の隷属に転換する
納富信留
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(3)国司と郡司のつきあい
郡司の妻たちと宴会!?……国司・大原真人今城へのはなむけの歌に記された「媚態表現」の真相と人心掌握術
上野誠
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(5)サルコペニア・フレイル対策
認知症予防にはどんな食事がいいのか?鍵はビタミンDの充足
小川純人
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
「発想力」の技法を学ぶ(1)発見と探究(前編)
“なぜ”を繰り返せ!『発想力の全技法』に学ぶ原因探究法
三谷宏治