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「虚実篇」から学ぶ優秀なリーダーの役割と戦略の重要性

『孫子』を読む:虚実篇(1)いかに主導権を握るか

田口佳史
東洋思想研究家
概要・テキスト
今回から開始となる『孫子』シリーズの第6編「虚実篇」。虚実とは空虚と充実であり、空虚とは手薄、充実とは手厚いことだと田口氏は説く。また、虚偽と真実という虚実もある。これらはいったい何を意味しているのか。虚実篇では、ビジネスや人間関係において相手より早く主導権を握るための極意を学ぶことができる。(全6話中第1話)
時間:10:59
収録日:2020/05/21
追加日:2022/01/03
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≪全文≫

●空虚と充実の関係をしっかり捉える


 今回は、虚実篇を話したいと思います。虚実というものは空虚と充実であり、空虚というのは手薄ということで、充実というのは手厚いということです。兵力には限界があります。どんな大軍隊でも全部手厚くするということはできません。どうしても手薄なところができますが、本当は手厚くしなければいけないのが、手薄ではなくて、ここは手薄で大丈夫だという論拠があってそれで手薄にするのですが、ここは手厚くしなければいけなというところがあります。

 ここで言っているのは軍隊ですが、人間の組織について、軍隊ばかりではなく、企業なども全て充実させることはできません。そこで、ここはいい、ここは駄目だ、というそういう空と虚、まさに虚実をしっかりとしつらえることがまず大切なのです。その意味で、どのようなものが薄手で良くて、どのようなところが手薄では駄目なのかということを、今回は読んでいきます。空虚と充実ということを表しています。

 もう1つは、虚偽と真実という虚実があります。虚偽というのは嘘です。真実は誠です。そういう意味では、戦争戦略論というのは何をいっているのかというと、今申し上げたように、常に充実した状態を維持するということはなかなか難しく、戦争というのは動いていますから、時と場合によっては、こちらのほうが本当は充実しなければいけないところが手薄になってしまうこともあります。そういうときに、どのようにそれをカバーしていくかということもしっかり考えていかなければいけないことを言っています。

 それでは、読んでいきます。まずは「孫子曰く、凡そ先に戰地に処りて敵を待つものは、佚<いつ>し、後れて戰地に処りて戰に趨くものは、勞す」です。これは、戦闘の場に先に行っていて、それで敵が来るのを待っているということを言っています。「佚し」というは人偏に失うと書いてあるので、これは反対に受け取られがちなのですが、これは安んじるという意味で、いってみれば余裕ということ表した字です。したがって、敵を待っているということは余裕を生じます。

 しかし、敵より遅れてあたふたと戦地に赴いたなどということは、今走ってきましたというくらいに苦労しているわけで、ハーハーといって到着するのですから、それは遅れるということをいっているわけです。ま...
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