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百貨店は富裕層中心の「お帳場」ビジネスを伸ばせるか?

日本の百貨店~培われた強みとは?(2)お帳場ビジネスとスターバックス現象

伊藤元重
東京大学名誉教授
概要・テキスト
百貨店のビジネスには、他の小売店にないさまざまな特徴がある。「お帳場」制度は長く続く慣習だが、むしろ新しいビジネスモデルへの活路として、学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏は注目している。ショッピングは果たしてeコマース一辺倒になっていくのか。企業も消費者も今こそ考えてみたい問題だ。(全2話中第2話)
時間:10:41
収録日:2017/11/27
追加日:2018/01/11
≪全文≫

●「お帳場のビジネス」が持つゆたかな可能性


 今回百貨店を見なおしてみて、さらに面白いと思ったのが、「お帳場」という日本の百貨店に非常に特徴的な制度です。いわゆる富裕層を中心に、一般のお客様とは別の待遇をすることを「お帳場」と呼んでいます。営業の人が、お客様の家まで行って対応することもあれば、時期折々にホテルなどで催事を行い、高級品を買いやすい価格で買えるように提供したりもします。

 データを見て驚きましたが、日本の大手の百貨店では、総売上の12パーセントぐらいが「お帳場」で占められています。一部ですが、大阪、名古屋、東京などで特に「お帳場」が強いといわれている百貨店では、総売上の15パーセントから20パーセントぐらいまで来ています。

 お酒の席で聞いた話なので、どこまで正確なのかは分かりませんが、お帳場の強い関西の百貨店がホテルで催事をしたところ、パテックフィリップ(PATEK PHILIPPE)という1個1,000万円ぐらいする時計が100個売れたというのです。おそらく一人が100個買ったのではなく、100人が1個ずつ買ったのでしょう。そういうマーケットが日本にあって、その層をしっかりつかんでいるということです。外から見ると非常に見えにくいことですが、これも日本の百貨店の、非常に重要で、面白い話だと思います。

 お帳場は、今の段階ではまだ高級時計や宝石、絵画、高級ブランド品のようなごく限られた商品ですが、今の言い方でいえば「C to B」のマーケットに当たります。変な言い方ですが、企業側が消費者に売っていく普通の形態を「B to C」と呼ぶので、その逆です。一人一人のお客様のニーズを聞きながら、ビジネスが対話をしていく。アマゾンなどが、ITによる非常に安価なコストで「C to B」を行うのも重要な流れだと思いますが、一方で、顧客の個別ニーズを聞きながら対応する「お帳場ビジネス」は、広げていくと非常に面白くなる可能性を持っています。

 日本の所得構造を見ていくと、いい面と悪い面をもたらしながらも、消費の二極化は進んできています。少しこだわってでもいいものを買いたい消費者が、ある一定の割合でいることは事実なので、その層をどこまで取り込めるかが、百貨店の非常に大きなポイントではないかと思います。


●全ての消費がイーコマースになる日は来る?


 もう一つ、非常に重要だと思うのは、今伸びているeコマースの...
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