IoT・AIが社会を変える―企業が生き残るための転換点
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
IoTやAIへの期待と懸念を経済学の視点で考える
IoT・AIが社会を変える―企業が生き残るための転換点
伊藤元重(東京大学名誉教授)
東京大学名誉教授で学習院大学国際社会科学部教授・伊藤元重氏が、経済学者の視点から社会変化と技術革新について論じる。アメリカ経済も日本経済も、技術の停滞に伴う低成長に長いこと苦しんできたが、ようやくAIやIoTなどの技術革新が、社会にも経済にも変化をもたらし始めた。この変化のとき、企業が生き残るために必要なことは何なのか?
時間:10分15秒
収録日:2016年11月30日
追加日:2017年1月4日
≪全文≫

●経済学者が考える社会変化と新技術


 今、世の中でAI(人工知能)と呼ばれているもの、あるいはIoT(これは「モノのインターネット」と訳すことがある)、またビッグデータやクラウドコンピューティング、ロボット・テクノロジー、こういったいろいろな新しい情報、あるいは情報通信に関わる技術が世の中を変えていくという大きな議論があります。これは非常に重要なことだろうと思います。

 こういう技術がどんどんと出てくることによって、社会がどう変わってくるのか。このことについて議論を進めていかなければいけないのですが、私は技術の専門家ではありませんので、経済学者から見たときにこの議論をどのように社会の中で考えたらいいか、その視点を一つ提供してみたいと思います。


●TFPが物語るアメリカの「黄金の100年」


 アメリカのノースウェスタン大学にロバート・ゴードンという大変に有名な経済学者がいます。少し前に出されたゴードン氏の本が大変よく売れていて、一般の人もよく読んでいるらしいのですが、この本には「黄金100年」といわれている1880年頃から1980年頃のアメリカの経済の実体について、非常に面白い話がたくさん出てきます。例えば、1907年にT型フォードという自動車の開発が開始され、20年後の1927年には全米の家庭に車が普及するほど、アメリカ社会を変えていったのです。

 では、T型フォードが出てくる20、30年前はどうだったかというと、詳しい数字は忘れましたが、ニューヨークでは馬に蹴られて死ぬ人が一週間に5人も10人もいるということが当たり前でした。どういうことかというと、ニューヨーク市内で主たる交通手段は馬車や馬で、5人に1頭くらいの割合で馬を利用していたということです。事ほどさように、交通手段が馬から自動車に変わることによって、社会も非常に大きく変わっている、とゴードン氏は本の中で語っているのです。

 ここから電力の普及や、大きな船舶や飛行機が広まるとか、あるいは情報通信が世界中で使えるようになるとか、いろいろなことが続きます。結局1880年から1980年の100年間、アメリカは非常に大きな成長を遂げたのですが、その成長の原動力をトライアルしようとして、経済学者がTFP(Total Factor Productivity、全要素生産性)と呼ぶところのものが非常に高かった、ということを、彼は結論として言っているのです。 TFPとは、要するに経済成...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(1)ビジネスのヒントは歴史にあり
『失敗の本質』、中国古典…ビジネスのヒントを歴史に学ぶ
三谷宏治
億万長者への道(1)お米屋さんから不動産業界へ
「背広を着てビジネスがしたい」との思いから宅建取得
高橋誠一
運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」
歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える
山内昌之
キャリア転換で人生を成功させる方法(1)2つの大きな潮流
なぜ40歳でキャリアについて一度考え直す必要があるのか
為末大
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
國廣正

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ