スーパースターの経済学とAIの可能性
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
スーパースターの経済学ではスポーツ選手もギャングも一緒
スーパースターの経済学とAIの可能性
伊藤元重(東京大学名誉教授)
さまざまな分野で「格差拡大」についての議論に接する機会が増えている。決して高くはない給料で地道に毎日コツコツ働く学校の先生やサラリーマンがため息をつきたくなるのは、「スポーツ長者番付」などに接したときだろう。2016年度版『フォーブス』の発表では、日本人最高はテニスの錦織圭選手で約34億円だという。一体これほどの差はどうして生まれるのか。学習院大学国際社会科学部・伊藤元重教授に解説いただこう。
時間:12分53秒
収録日:2016年6月16日
追加日:2016年7月19日
≪全文≫

●野球選手は、なぜ学校教師の何百倍も稼ぐのか


 最近、いろいろな分野で格差の拡大が議論されています。

 真面目に教育に取り組んでいる中学や高校の先生方の収入が比較的低から中レベルにとどまる一方で、野球選手やタレントの給料は大変高い。あるいは毎日コツコツ働くサラリーマンが稼いでいるのはほどほどかカツカツの年収なのに、企業を起こして一発で成功した経営者は膨大な創業者利益を獲得する。こういうことをどう考えたらいいのだろうかという議論が、いろいろなレベルでなされているわけです。

 もちろん格差が広がることによって発生し得る社会的な不安定や問題に対処するためには、どのような社会保障が考えられるか、あるいは税制をどうするかなどが問われていくのだろうと思います。しかし、そういった大きな問題を考える前に、なぜ同じように働いていても、これだけの賃金格差、所得格差が生まれてくるのかということは、きっちりと分析する必要があるだろうと思います。

 今日は、ベンチャーによる起業などでよく話題になる問題は脇に置いて、同じように働いている人でも、スポーツ選手やタレントと、例えばサラリーマンや学校の先生とは、なぜこんなに給料に差がつくのかについて、経済学でどういう議論があるのかを紹介してみたいと思います。今の世の中の動きを見る上でも非常に重要だし、今後の展開にとっても大事だと思っているわけです。


●影響力の広がりを考える「スーパースターの経済学」


 この分野で非常に有名な研究に「スーパースターの経済学」というものがあり、このタイトルの論文が発表された後、さまざまな経済学者による議論が展開されてきました。元の論文は、故シャーウィン・ローゼン教授(シカゴ大学)によるものです。

 なぜ、野球ではイチロー、プロテニスプレーヤーでは錦織圭選手のような人が、非常に優秀で真面目に子どもたちのことを思って現場で教えている中学校の先生より高い給料を得られるのか。

 そのときの一つのキーワードとなるのが「リーチの長さ」、あるいは「影響力の広がり」だろうと思います。例えば、イチローがヒットを重ね、史上最多となるヒット数の記録を打ち立てる瞬間には、その偉業をテレビやニュースで観ている人がたくさんいて、その情報を新聞で見て喜ぶ人もたくさんいるわけです。

 簡単に言うために、イチローや錦織選手の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?
経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」
田口佳史
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
國廣正
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓