アジア大交流時代の観光戦略
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
観光戦略に注目!2020年にむけて進めるべきこととは
アジア大交流時代の観光戦略
伊藤元重(東京大学名誉教授)
10年後、20年後、アジアに「大交流時代」が訪れると、東京大学大学院経済学研究科教授・伊藤元重氏は語る。大交流時代に向けた「新たな観光戦略」を考える。
時間:11分54秒
収録日:2015年12月2日
追加日:2016年1月11日
≪全文≫

●観光戦略を長期的にどう捉えるべきか


 安倍内閣になってから、日本の成長戦略の一つに観光戦略があることは、皆さんよくご存知だと思います。2012年、安倍内閣の前年は、訪日外国人客が850万人でしたが、安倍内閣は2020年までに2000万人まで増やすという目標を立てました。その目標が出たときは少し大胆だと思いましたが、この2、3年で急速に訪日観光客が増え、2015年度は来年3月時点でおそらく1900万人くらいまで増えるのではないかといわれています。そのため、当初は2020年までに2000万人という目標でしたが、それを2500万人にしようとか、中には景気のいいことに3000万人に上げようという声まで聞こえてきています。いずれにしても、目標を上方に修正する動きが起こるでしょう。

 また、ホテル、鉄道、航空機、空港といった観光・交通関連企業はもちろん、都内の百貨店やドラッグストアなどの小売業にも、インバウンド消費が相当大きなインパクトを与えています。ということで、現在の観光戦略は政策として見るとうまくいっているわけですが、問題は、日本経済の長期的動向の中で観光戦略をどう捉えるべきなのかということです。いま一度、きちんと考えるべきことだろうと思います。


●ヨーロッパは「大交流時代」になっている


 実は、1カ月ちょっと前に外務省の仕事でスペインのマドリードに行き、在スペイン日本国特命全権大使の越川和彦さんとお話しして、印象的な数字を聞きました。現在、スペインにやって来る外国人の数は、1年間におよそ6500万人です。スペインの人口は日本の約3分の1(約4600万人)で、そこに6500万人が来るのですから、大変な数です。越川大使によると、彼がスペインに赴任した頃、おそらく30年ほど前だと思いますが、1年間にスペインを訪れる外国人は1000万人いくかいかないか、ひょっとしたらそれより少なかったということです。この30年の間に、スペインは観光大国として大きく伸びたのです。

 そこで、少し気になって調べたのですが、フランスには1年間に外国人がどのくらい来るかというと、8300万人強で、世界最大の観光立国です。イタリアは、4600万人から4700万人ほどです。少し失礼な言い方かもしれませんけれども、食事が口に合わないという人も少なくないドイツでも、3000万人以上の人...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥