日本とブラジルの将来に向けて~何を学び合えるか?
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ブラジル的楽観性をもって将来を展望せよ!
日本とブラジルの将来に向けて~何を学び合えるか?
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
歴史的に深い関係を築いてきた日本とブラジル。日本がブラジルに提供できるものが多々あるのはもちろんだが、ブラジルから日本が学べるものもまた、決して少なくない。双方何を学び合い、教え合い、そして手を取り合って何を世界に発信できるのか? 島田晴雄氏が、日本とブラジルの将来を展望する。
時間:11分19秒
収録日:2014年4月10日
追加日:2014年6月19日
≪全文≫

●日本からブラジルへ提供できる最たるものは、産業の生産性


 最後に私の感想ですが、日本はいったいブラジルに何をできるのか、あるいは何がブラジルから学べるのか、逆に言うと、ブラジルは日本から何が学べるのか、日本に何を教えることができるのかということです。日本とブラジル、双方二つの観点から申し上げたいと思います。

 日本がブラジルに提供できて、ブラジルが日本から学べるもの、これは植木茂彬さんも指摘していましたが(参照:「ブラジルと日本の問題点~ブラジル2世・植木茂彬氏からの進言~」)、産業の生産性だと思います。

 日本の産業の生産性は大変特徴があります。日本という国は、世界の主要国の中でも珍しく、トヨタや日産のような巨大企業がありますが、トヨタ一つをとってみても、その下には協豊会、栄豊会という数百社の下請け構造があり、その他に2次、3次、4次、5次と下請けがあって、全部合わせると数千社、あるいは1万社、といった企業なのです。その中から自動車1台につき2万数千点の部品を組み合わせます。つまり、トヨタ自動車だけであの優秀な車はできていないのです。実は8割ぐらいは、それを支えている下請け構造が、本社と一緒に生産性向上、品質改善をする、人的資源の開発をするということを一緒になってやるから、国全体が豊かになるという構造を日本は持っているわけです。

 こうした構造を構築したのは、実は戦後の高度成長です。実は中国もロシアもそういう構造を持っていません。アメリカもあまり持っていません。持っているのは台湾なのですが、台湾は中小企業が多く、その代わり主要企業があまりありません。

 ということで、主要企業が最後にアセンブリーをして、国全体の下請け企業を支えるという構造を見事に持っているのは、日本だけです。ブラジルにはもちろん、支える企業はほとんどありません。

●ブラジルに学びたい、ブランド価値創造力

 
 エンブラエルは、たちまちのうちに世界最大の中小型機メーカーにのし上がった会社です。工場に行ってみるときれいなのです。ただ組み立てをしているだけで、音も聞こえません。メーカーと言いながら、これはただ最終製品を組み立てているだけです。実を言うと、メーカーではないのです。

 では、どこから部品を調達しているのかというと、これは全部、海外から部品は輸入しています。そこで、一...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照