●浜松市の取り組みを世界に発信する
2016年11月8日、欧州評議会が主催する国際会議「世界民主主義フォーラム」がフランスのストラスブール市で開かれました。そこで本市の多文化共生の取り組みについて発表したのですが、これは、欧州評議会と、欧州評議会のオブザーバーである在ストラスブール日本国総領事館からの参加要請を受けて出席したものです。
世界民主主義フォーラムは、欧州評議会が開催する国際会議です。民主主義に関する世界的な議論を行うことを目的に、2012年からフランスのストラスブール市で毎年開催されています。また同フォーラムへの参加に併せて、11月9日には、パリ日本文化会館で本市の多文化共生についての講演を行ってきました。欧州における2回の発表は、本市の多文化共生の取り組みを世界に発信する貴重な機会となりました。
●外国人受け入れは怖がることではない
1990年の改正入管法施行後、浜松市をはじめとした類似の基礎自治体は、いや応なく外国人住民を受け入れてきました。外国人住民には、納税等の義務を果たすとともに、地域社会での生活ルールを守って生活してもらい、他方で私たち自治体は、国からの十分な支援を得られない中で必要な行政サービスを提供してきました。
これまでの私たちの経験から、一定程度のルールの下で外国人を受け入れることは、決して怖がる必要がないことを確信しました。人口減少社会において、外国人の受け入れはもはや避けて通れません。その際、大事なことは、外国人を労働者という視点で捉えるだけではなく、外国人の持つ多様性を地域の活力に変えていくという前向きな姿勢です。
国は外国人の受け入れ方針を明確に示し、現在議論が進んでいる出入国管理政策を多文化共生政策と連動させ、バランスの取れた施策展開を図る必要があります。その際には、本市のように、これまで現場で外国人住民を受け入れ、多文化共生に取り組んできた自治体の経験やノウハウを、ぜひ活用してほしいと思います。
国が受け入れ方針を曖昧にしたまま、中途半端に場当たり的な受け入れを続けていけば、これまでのような現場での混乱が続いていきます。そろそろ日本は、きちんとした理念とルールの下で、外国人を積極的に受け入れていく社会を目指すべきだと考えます。
●浜松市から政府への提言
最後に、国へ提言をご紹介します。まず、「どのような外国人を、何のために受け入れていくのか」といった明確な方針が必要だということです。さらに、その方針に基づいた受け入れ基準やルールを決めていかなければならないと考えます。
また外国人も、来日すれば血の通った生活者であり、住民であることを忘れてはなりません。「デカセギ」という、単なる無機質な労働者としてしか来日外国人を認識していなかったところに、これまでの大きな誤りがありました。
次に、責任を持った一元的な組織を設置することを提言します。これまでは、責任官庁がないため、無責任な状況が続いてきました。広範囲な官庁にまたがる外国人施策を、総合的に調整し推進する、「(仮称)外国人庁」の設置を強く希望します。消費者庁の設置で、消費者行政が飛躍的に進んだように、専門の組織を設置すれば、外国人施策も飛躍的に進むはずです。その上で、国と自治体の政策を連動させていくことが重要だと考えます。
そして、外国人を生活者としてスムーズに日本の社会に受け入れていくためには、日本語教育や子どもの教育などの施策をはじめ、社会保障、雇用政策など、生きていくために必要な制度・仕組みをきちんと整備しておかなければなりません。
これら三つの内容は、互いに密接に関連し、どれも欠くことのできないものであり、国が腹をくくって取り組むべきものと考えます。
最後になりますが、今後、人口減少・少子高齢化・グローバル化の進展で、外国人の増加と定住化が進んでいくことは、疑う余地がありません。浜松市は、これまでの長い期間の経験を生かし、国や国内外の諸都市、関係機関・団体等と連携・協働しながら、引き続き多文化共生社会の実現に向けた取り組みを推進していきます。
以上で、「浜松市の多文化共生の取り組み」についての話を終わらせていただきます。ありがとうございました。