●多文化共生には「市民協働」が不可欠だ
続いて「各種関係機関・団体の取り組み」について説明します。これまでお話ししたように、外国人住民に関わる課題は多種多様で、その解決にはさまざまな分野の関係者の協力が必要です。本市では、多文化共生に関する100を超える外国人コミュニティやNPO等市民団体、関係機関が活動をしています。本市の多文化共生施策の推進母体である浜松国際交流協会が中心となり、関係機関と連携して事業を実施しているのです。そのため、より効果的で広範な取組が可能となっています。
浜松市多文化共生都市ビジョンの推進方針でも、「市民協働」など多様な主体による連携を重視し、パートナーシップによる多文化共生の取組を推進しています。社会的課題やニーズが多様化、複雑化する中、行政だけで公共を担える時代ではありません。そこで、行政とNPO等の市民団体の協力・連携による、効果的・効率的な公共サービスの提供に、期待が一層高まっています。特に多文化共生分野は、地域の実状に合わせ、柔軟に対応していく必要性があることなどから、市民協働による取組を進めていくことが不可欠です。
●浜松市内で活動する市民団体の活躍
本市で活動している代表的な団体を三つ紹介したいと思います。はじめに、NPO法人・フィリピノナガイサをご紹介します。この団体は、フィリピン国籍のコミュニティ団体で、フィリピン人の生活や教育を支援しています。近年、本市では、フィリピン人人口が増加しており、活動の規模も大きくなっているため、日本人支援者も多く参加して組織を支えています。
主な事業としては、小中学生の児童生徒を対象とした就学支援教室である「ハロハロ教室」を、年間を通じて実施しています。また、大人を対象とした学習・生活支援教室として、「バヤニハン日本語教室」を実施しています。その他、先に日本に来日している親からの呼び寄せなどで増加している若者を対象とした教室を開始しています。このように支援メニューを増やして、活動の幅を広げています。
二つ目に、静岡県ベトナム人協会の活動を紹介します。静岡県ベトナム人協会は、ベトナム人の生活や教育を支援する団体として活動しています。設立当初は難民支援を主としていましたが、現在では留学生や技能実習生の支援活動も行っています。また年間を通じて、主に子どもを対象とした日本語教室を実施しています。さらに近年は、防災理解教育にも力を注いでおり、2015年度は浜松国際交流協会と連携して、親子の防災ワークショップを実施しました。
三つ目として、NPO法人ARACE(アラッセ)の活動を紹介します。NPO法人ARACEは、外国人の子どもの教育を支援する団体として活動しています。代表者が日系ブラジル人ということもあり、当事者の視点で経験やノウハウを生かした子どもや保護者への支援を実施しているところが特徴です。
2015年度からは市と連携し、不就学等の外国人の子どもの受け皿となる教室を実施するなど、教育支援に関わる活動の幅を広げています。毎年多くの子どもを、安定した就学に結び付けており、ここから巣立った子どもの中には、現在大学生となって支援される側から支援する側に回る方も出てきています。
●南米外国人学校への助成政策
次に、関係機関の取り組みを紹介したいと思います。本市は、日本でブラジル人が最も多く居住するまちとして知られており、在浜松ブラジル総領事館が2009(平成21)年5月に開設されました。現在は、領事館業務の他、市との共同により、毎年フェスタ・サンバを開催し、日本人と外国人の交流促進を図るとともに、多文化共生都市・浜松を全国に発信しています。また、浜松国際交流協会とともにポルトガル語スピーチコンテストや労働セミナーを開催するなど、連携強化を図っています。
これまでシリーズの中でお話ししているように、1990年の出入国管理及び難民認定法改正施行による南米日系人の来日急増に伴い、子どもたちの教育が課題となりました。同時に、全国でもブラジル人学校やペルー人学校が急増しましたが、本市でも外国人学校がいくつも設立されました。そうした南米系外国人学校としては、初めて各種学校として認可を受け注目を集めた、ムンド・デ・アレグリア学校の挑戦について紹介します。
外国人学校ムンド・デ・アレグリアは、出稼ぎで来日した日系人の親からの要望を受け、2003(平成15)年2月に設立されました。設立当初は、授業料を安く抑え、スズキをはじめとした企業の寄付などを頼りに運営をしていましたが、経営は困難を極めました。
そうした中、本市が各種学校・準学校法人の認可基準の緩和を働き掛けた結果、全国に先駆けて、各種学校としての認可が同校に与えられました。各種学校の認可を受けると、地方自治体からの助成や、...