●気密なき断熱は無力――断熱と同様に不可欠な「気密」
前 これまで、断熱の重要性を繰り返しお伝えしてきました。断熱は本当に大事な性能で、冬も夏も不可欠な性能ですけれど、断熱だけすれば冬に暖かくなるのかというと、それは少し違うということになります。
先ほど、窓が弱い、床が弱いということが冬の寒さの原因であるということをお伝えしました。これは断熱が足りないと、熱が勝手に出入りしてしまう、外の冷たい熱が下にどんどん入ってくるからというのもあるのですけれど、もう1つ、外の冷たい空気がどんどん侵入してきてしまうことも大きな原因なのです。
だから先ほどから出てきている、こういったエアコンを付けても少しも室内が暖まらないのです。
これは断熱性能が足りないということはもちろんあるのですけれど、実は「気密」性能が足りないのです。とくに窓周りや床のところの気密が足りません。なので、外の冷たい、重たい空気が好きなように入ってきてしまって、足元を冷やしているということがあるわけです。特にこれはエアコンで暖房する場合に問題になります。
これは、コンピュータでエアコンの空気の流れを解析したものになっております。エアコンというのは高い場所にあって、そこから暖かい空気を吹き出すということを行います。エアコンの吹き出す暖かい空気は軽いのです。ですので、初めはエアコンの吹き出した暖かい空気は軽くて、上のほうに溜まっていって、そして十分に上のほうが溜まると、最後、ようやく足元まで暖かい空気が届くということになるわけです。
建物の断熱性能、気密性能が十分あれば、このように暖かい空気がどんどん室内に溜まっていって、上のほうから溜まっていって、最後は足元まで暖まるということが期待できるわけなのです。
たいへん残念ですけれど、日本の家はこういう断熱・気密性がないわけです。ですので、実際の家ですと、先ほどの高気密の家は左側になるわけですけれど、日本の多くの家は右側の低気密の家ということになります。低気密の家は隙間がいっぱい...