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最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ

柿埜真吾
経済学者/思想史家
概要・テキスト
反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話の今回は、トランプ政権が突き進み得る最悪のシナリオと、そのような危機的状況の中で日本が取るべき姿勢について考える。(全8話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:09:39
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
≪全文≫

●反エリート主義による専門家軽視


―― 今(第8話)は移民のお話でしたけれど、今度はマクロ経済の運営ですね。政策をどう進めていくかという点においては、金融政策を進めていく役目が、アメリカだとFRB(連邦準備制度理事会)ということになりますけれど、そこが大変重要な役割を担うことになります。ここについても独立性の危機ということなのですか。

柿埜 基本的にトランプ政権は、先ほどから文化戦争の文脈でずっとお話をしていますけれど、「われわれはリベラルのエリートたちに騙されて酷い目に遭っている普通の人間なのだ。そういうエリートどもを追い出して私たちの国を取り戻すのだ」という考えでやっているわけです。

 移民とかLGBTとか、なんでもかんでもそうなのですけれど、あるいは「外国のウクライナが、自分たちの支援に乗っかっている」というのもそうなのですが、「そういう奴らにいいようにされてきた」と思っているわけですが、これは思い込みであるわけです。

 「とにかくエリートをやっつけなければいけない」という発想があってそれでやっているものですから、専門家というものを全然信用しないわけです。軍事に関しても、素人を任命するようなことをやっていますが、FRBに関してもやはりそうなのです。

 パウエルFRB議長を任命したのはそもそも第一次トランプ政権だったはずなのですけれど、「専門家がやるのは気に食わないと、私のほうが企業経営を分かっているから、こんな奴らが金融政策を決めるなんて嫌だ」「ドル安にしろ」、あるいは「金利を下げろ」といったことを、トランプは好き放題、選挙中から言っていたわけです。

 そういう発言の通りにパウエル議長がFRBの政策を決めたりしたら、アメリカのインフレは一応落ち着いていますけれど、また跳ね上がる可能性があります。まだそんなに落ち着いていない状態です。しかも、トランプが関税政策とか大量強制送還をやれば上がる可能性が高いわけです。パウエルは変なことはできないと思って、真面目にやっているわけです。

 ところが、トランプが本当にこの調子でずっと圧力をかけ続けると、しかも今までの傾向からして専門家を自分のイエスマンに置き換えていくというやり方でやっていくと、パウエルも2026年(まで)任期ですけれど、任期前に追い出される可能性も否定はできないの...
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