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トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的

第2次トランプ政権の危険性と本質(2)トランプ関税のおかしな発想

柿埜真吾
経済学者/思想史家
概要・テキスト
「トランプ関税」といわれる関税政策を積極的に行う第二次トランプ政権だが、この政策によるショックから株価が乱高下している。この政策は二国間の貿易収支を問題視し、それを「損得」で判断してのものだが、そもそもその考え方自体に大きな誤りがある。その考え方は、アダム・スミス以前の重商主義の考え方よりも劣るというのだが……。今回は「トランプ関税」の基本的な思想について、その詳細と経済学からみた問題点をわかりやすく解説する。(全8話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:33
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/17
≪全文≫

●トランプ政権とバイデン政権の「政権初期の株価比較」


―― 次にグラフを置いていただいておりまして、「第二次トランプ政権の異変」ということですけれど、これは何の図になるのでしょうか。

柿埜 これはアメリカの株価が、(トランプが)大統領に就任してからどう推移してきたかということを見ているのです。第一次トランプ政権と第二次トランプ政権の両方と、ついでにバイデン政権も比較のために置いていますけれど、べつに大統領に就任したからといってなにか大きな出来事があったわけではない期間を全部取っているわけです。

 ということは、大統領自身がとてつもなく変なことをしない限りは、普通株価はそんなに変動したりしないはずであるわけです。実際むしろプラスの政策を取ったら、株価が少しずつ上がるぐらいのことがあってもおかしくないわけです。

 こちらを見ていただくと、第一次トランプ政権もバイデン政権もべつに株価はそんなに変なことになってないわけです。どちらかといえば上がっていて、そんなに悪い政策を取っていたわけではなかったのです。

 ところが、第二次(トランプ政権)のほうは、発足した最初の時点ではみんなわりと期待していたのが、「あれ、こんなはずじゃないぞ」といって、トランプ政権が変な政策を打ち出すたびにどんどん下がっていって、2025年4月になって、やるかやらないかがはっきりしなかった関税を全部本当にやる。しかもとんでもない規模でやるということが分かって暴落したところで、それを示しているわけです。

―― これは、一般にはその4月の関税のショックが大きく報じられたところでありますけれど、そこまでもかなりジリジリと落ちているのですね。

柿埜 そうですね。結局、トランプ政権が「脅し」でいっていると思っていた関税が本当に実施されるというのがだんだんと明確になってきました。それから、(不法移民の)大量強制送還とかそういう話も本当にやるらしいということが分かってきたところから、株価が「ちょっとこれは期待外れだ」という反応をかなり神経質に示しているということなのです。


●どうしようもないトランプ関税の計算式


―― それで相互関税ですが、全くよく分からない関税なのですけれど、計算式は、ここに示していただいたような...
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